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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

わかりにくい

わかりにくい_b0250023_20100991.jpg

京都新聞(2024.3.10)の記事、みなさんは見出しをどう読むだろうか。

私がわからなかったのは、「減少転じる」の意味である。減少だったのが変化した、つまり増加したのか、それとも、減少に転じた、つまり減ったのかが、見出しだけでは理解できなかったのだ。

減少(が)転じる、と、減少(に)転じる、では、意味が真逆になってしまう。見出し行のスペースはまだあるのだから、助詞を一つ削る必要もなかっただろうに。編集部はどういう判断をして、この見出しになったのだろうか。ええ、わかりにくい。

# by walk41 | 2024-03-11 20:15 | ことばのこと | Comments(0)

人類

時代と地域、時間的そして空間的な条件によって、人と人が作る社会の在り方への眼差しは幅を持つ。煩わしい不自由な人間関係が嫌で都会に出てきたのに、孤独死が問題だと騒がれる。風光明媚で気楽な別荘暮らしを夢見て移住したのに、大規模な災害に見舞われたときには、絆や団結が強調される、というようにである。
かくも、自由と制約、独立と依拠といった個と集団の関係は、どちらかが正解ということではなく、振り子のように常に揺れ動くのだろう。

この点に関わって面白い表現があった、佐藤俊樹『社会学の新地平ーウエーバーからルーマンへ』(岩波新書、2023)では、人間関係の「モノ」化(「事象化」とも呼ばれる)が進むと、他者に対する無関心か他者を徹底的に利用する利己主義かになるとして、次のように述べている。

「モノ化は個人単位での利益の最大化にはつながるが、組織としての合理性や効率化には結びつかない。もちろん「人類の「実益」にもつながらない。内面的な孤立化が進めば「人類」という発想自体がなくなるはずだ」(115ページ)。

なるほど、人類という表現は人が個々ではなく、類的な存在であることを踏まえている。そして、類的とは生物的な意味だけでなく、社会的な意味においていっそうそうである点も首肯されるだろう。「情けは人のためならず」は、情けを掛けるのは自分のためだと解説されるが、同時に他者のためにもなっている。経済評論家の大江英樹さんは、寄附行為を指して「自己満足」と話すが、それが他者のためにもなっていることを言い忘れていない。かくも、自分と他者は切り離せない。

私だけだろうか。人類という言葉を、人間の類的存在として捉えたことがなかったというのは。



# by walk41 | 2024-03-09 07:42 | ことばのこと | Comments(0)

トランプ

トランプ_b0250023_17060793.png

けっこう長く生きてきたのに、いまの今まで、こんな身近なことに気づきませんでした。

右利きの人は、トランプを持つ私の写真にきっと違和感を感じることでしょう。なぜって、カードの識別をするために、カードの右下をずらしているのですから。

そうなのです。私は左利きなので、通常のトランプならばこのようにカードを持たなければ、カードを区別できません。というか、右利きの人が、トランプのカードを左上で見分けていたということすら知らなかったのです。写真のようにカードを持つことが当たり前だとずっと思い、トランプに触れてきましたが、これが決して一般的ではなかったのだと、大きな衝撃を受けた次第です。

右利きの人を標準にくらしが設計されている一例と言えるでしょうが、ユニバーサルデザインやバリアフリーといった議論とは別に、余りにも当たり前過ぎて、一片の疑問すら抱くことがなかいことがある、ということに驚きを隠せません。



# by walk41 | 2024-02-29 17:15 | 身体 | Comments(0)

それぞれの学校

それぞれの学校_b0250023_08230746.png
産経新聞<産経抄>地下鉄学校を開いた「不屈の街」に学べ(20240227)から引用。

ロシアによるウクライナ侵略から2年が過ぎた。「戦争疲れ」とも言われる中、国際法と人権を蹂躙するロシアへの非難を緩めてはならない。ロシアはウクライナから撤退せよ。

戦争が続く彼の地で、地下鉄の駅に設けられた学校で学ぶ子どもたちがいる。教育はまだ見えない未来への希望でもある。ぜひ生き延びて歴史の次のページを綴ってほしい。


# by walk41 | 2024-02-27 08:28 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)

「教員不足」とその対応

【ソウル=藤田哲哉】韓国の総合病院で働く研修医らが20日、一斉に職場を離脱した。大学医学部の定員を増やす政府の方針に反発した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は閣議で「国民の命と健康を人質にしてはならない」と職場復帰を訴えた。一部の医療現場では手術延期などの混乱が起きている。

韓国メディアによると、大学病院などには医師・研修医が約1万3000人いる。このうち約6400人が20日までに辞表を提出した。約1600人は実際に職場を離れたという。

政府は地方での医師不足に対応するため、医学部の定員を2025年度の入学から2000人増やし、約5000人にする方針を示した。35年までに医師を1万人増やすことを目標としている。

韓国の医師界は「医療の質が低下する。医師の数は十分だ。待遇改善を求める」などと強く反発している。人手不足から各地で手術のキャンセルなどが相次いでおり、診療拒絶や入院延期といった影響も出ているという。(日本経済新聞、20240220)

ーーーーー

興味深い事案。3000人の医学部定員を5000人に増やすとは、現行の倍近い規模の増員である。こんな急激な量的拡大は、質的低下をもたらすというのが医師側の批判だ。

このことを、現在の日本の教職に引きつければどうなるだろうか。韓国の例を援用すれば、教員不足だから教育学部の定員を大幅に増やすべきという主張になっても不思議ではない、にもかかわらず、そんな声が当の教育学部関係者はもとより、教育委員会や教員団体からもまったく聞こえてこないのは、いったいどういうことだろうか。まったくもって不思議な現象ではないだろうか。

結論を急げば、多くの人は、教員不足という問題が教員有資格者の不足によるのではなく、有資格者はいるにもかかわらずなぜか教職に就いてくれないという「開放制」教員養成制度の光と影を見ているからである。つまり、教員になりうる人は社会に数多くいるのに、彼ら/彼女らは教員免許状を持っているだけで、これを活用しない。このため事実上、教員になる人を見つけることができない、という状況が生まれている。こう解釈できるのではないだろうか。

教員免許を持つとはこれを活用することを前提とするもの、この観念が強いところでは、教員不足は有資格者の不足を意味する。そこでは、いかに有資格者を輩出するかが課題とされるのだ。たとえば、ドイツでは、Quereinsteiger や Seiteneinsteiger といった「傍系参入」として、大学卒あるいは大学院修了ではあるけれど教職課程を経ていない人たちを募り、かれらを教員に養成する制度が運営されている。私たちの研究(榊原・清水「ドイツの教職に見られる傍系からの参入ー教職の専門性と教員資格の正統性ー」2022)の限り、これは日本でいう特別免許状制度などとは全く異なる、教職専門の学修と教育実習を経ることを必須とする教員養成である。

こうした「本格的な」有資格者の輩出に臨んでいない点でも、日本の教職像は大らかだ。つまり「開放制」は、大学での教員養成のあり方に留まらない。教職を「何でも屋さん」に位置づけることで葛藤する社会問題のクッションにする。ここには、日本の学校は「人格の完成を目指す」目標を掲げるすぐれて開放的なところだという社会的通念が投影されているのである。





# by walk41 | 2024-02-22 07:31 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)



榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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