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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

なぜ、おもしろくない校内研究をやっているの?

日本の学校の大きな特徴とも言える校内研究、そのほとんどは、授業研究として行われている。

毎年、春に研究主題と仮説の設定、主題に関する学習と議論、ときに「先進校視察」、そして研究授業の事前準備、実践、事後研究会、年度末のまとめと、校長以下、全教員が1年間にわたって取り組むもので、義務教育学校、とくに小学校で一般的に見られる。

授業研究なのだから、「授業以外の仕事(-昔、雑務と言う人もいましたね)が多くて困る」とこぼす教員にとっては、さぞやりがいのある活動かと思いきや、その実際はまったくの反対、「やりたい訳ではない」代物なのである。

校内研究を進める立場の研究主任に喜んでなる人はまずおらず、これに当たった際には「どうしよう」と悩まされる。「自分がやりたくないものを、同僚にさあやりましょうと話さなければならないことが、辛かった」と話してくれた元研究主任もいる。

多くの場合、仮説を立てて検証していくと銘打たれるのだが、そのおおよそは「子どもたちが自発的に活動するような授業の仕掛けをすれば、主体的に動く子どもへと成長するだろう」といった、トートロジー(同義反復)である。「富士山は山だろう」「朝にご飯を用意すれば、朝食になるだろう」といった域を出るものではなく、間違いではないけれど、意味のない文章にとどまる。

このため、研究授業をやっても何が検証されたがわからず、事後の協議も焦点のないおしゃべりに終始する。司会を務める研究主任の最後はたいてい「まとめることはできないんですけど、いろんな意見が出てよかったです」。最後は何となく盛り上がって「お疲れさま~」、これがまず常と言っても過言ではないだろう。

こんなスタイルがどこから来たのか知らないけれど、はっきり言って、もう止めませんか、こんなこと?!

時給うん千円で働いている教員が、こんなことに結構な時間を使っているなんて、失礼を承知で言えば、無駄である。学校経営として基本的な管理ができていないと言うべきことだ。

それとも、こんなことが検証されて、新たに授業に活かされている、研究の蓄積があるんだ、やってて発見があっておもしろいんだ、という方、ぜひ反論してください。その議論を通じて、よりよい校内研究のあり方が見えてくるのではないかな。
by walk41 | 2012-08-07 15:05 | 学校教育のあれこれ | Comments(8)
Commented by tyouyue at 2012-08-09 23:23 x
そうですね。いま中国もそんな意味がない研究授業があります。いったい何か研究したいのは最後までわかりません。だから、日本へ院生になりに来ました。院生になると、興味があることを研究したいです。
Commented by walk41 at 2012-08-10 02:32
tyouyueさん、中国における授業研究の様子、どのようなものでしょう。外見上は同じようにも見える反面、その研究のあり方が違っているとすれば、とても面白いことだと思います。

大いに励んで、大学院に進学してください。
Commented by mitty at 2012-08-10 09:30 x
自分は最近は研究授業をしていないのですが、初任者が毎年3人くらいは来る学校なので、毎年、初任者が各学期に1回ずつ研究授業をしています。昨年度は自分と同じ教科の初任者が研究授業をしていたので、その準備につきあいました。
講義形式の授業をしたときの準備には、大した手伝いもできなかったのですが(特にすることもなかったため)、演示実験をするときにはどうすればその現象が分かるかということで、普段の授業準備ではできないくらいそのテーマについて深く考えることができました。
これについては、研究授業の成果と言えるのではないでしょうか。
Commented by walk41 at 2012-08-10 10:32
なるほど。確かに、抽象的なものをいかに具象化するかという点で、わかりやすい授業を追求するということはありますね。ただし、教科のことを私がわかっていないからなのかもしれませんが、仰ることは「基本的な条件」に含めて良いかと考えます。

私が勝手に定義する「基本的な条件」とは、勉強するのに机と椅子があった方がよいとか、クラスの人数は100人を越えない方がよい、あるいは、観察や実験上の器具やツールのあることが望ましい、というものです。そして、その多くは施設・設備面や人事面での対応になるので、個々の教員が何をするのという話には馴染まないと思います。(続く)
Commented by walk41 at 2012-08-10 10:33
これに対して、たとえば、「これまでは、地球から見て日食を説明していたけれど、月から見たら、どうなるかという説明で臨んでみたらどうなるか」とか「パワーポイントを使って、この現象の説明をした実践はないから、やってみよう」ということであれば、探索的な研究、つまり仮説を立てないで、結果を必ずしも予測しないでやる研究になります。こうしたことは、それぞれの授業でできるでしょうし、その結果がどうであったのかを記述、記録しておくことは、一つの授業研究になるでしょう。(まだ続く)
Commented by walk41 at 2012-08-10 10:33


しかしながら、仮説を立てない試みであっても、生徒の反応や様子はその場だからこそに留まり、次の機会でも、さらにはいつでも同じ反応を示す訳ではありません。「その時は、そうだった」ということ以上の意味を持たないでしょう。もちろん、同じようなやり方を何十人もの教員が各地の学校でやってみて、おおよそ同様の結果が得られたのならば、「使える方法」になることはあり得ると思います。もっともその多くは既に「常識」として定着しているのではないでしょうか。

かくして、「より良い授業」を実現する上で、「~すれば、~になるだろう」という一つの仮説の検証を試みるようなスタイルは、まったく非生産的である。私はこう捉えているのです。
Commented by Koji at 2013-04-08 00:19 x
全く同感!
校内研は、時間と成果のバランスが悪い。
コストパフォーマンスが良くなさすぎる。
無駄だと感じても、言葉に出せず、健気にやってしまう日本人気質。
トートーロジーを真面目に検証、外れるわけない検証を一生懸命結果を出そうとする労力をもっと子供の能力開発、管理に役立つワークショップをやった方がいいと常々思ってるのだが、なかなかそれがメインになりそうもない。
校内研の授業も授業した教師は多少資質向上があるだろうが、参観者は終わってやれやれ、である。授業するのも見るのおノルマでやってる。
授業が成功して喜ぶのは当然だが、それでは完全にマスターベーションだ。
全学年授業しても6回の内、1回だけしか教師としての応力を高めることは実質できないのが今のあり方だ。
全回をワークショップにしたら全回収穫あると思うのだが、いかがだろうか。
Commented by walk41 at 2013-04-08 09:04
コメントをありがとうございます。おっしゃるワークショップのスタイルに賛成です。

そうすれば、実際に授業をやらなくてもよいし、一部の子どもだけ残して他は下校させたり、自習時間にさせたりせずとも済みます。

そもそも研究授業なるものは、上品に言えば「ショー」(見世物)、失礼を顧みずに言えば「やらせ」なのですから、授業を担当した人には、いくばくか学ぶことがあるでしょうが、周りの人にとっては、おっしゃるように「やれやれ」なのでしょうね。

さて、ではどのように学校を変えていけるかです。提案する方向に進める上での障碍は、どこにあるのでしょうか。校長が反対する?教育委員会が嫌がる?あるいは同僚の間から「そんなのは…」と声が上がる? 時給うん千円の仕事に就いている教職として、価値あるものなのか、ひいては納税者に説明できるものなのか。

こんな辺りから議論を始め、「前年度踏襲」を少しずつ改めていっていただきたい、と強く願っています。
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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