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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

教育目標とは何か

大阪発の教育議論が波紋を呼んでいる。

その一つ、「選挙で選ばれた首長が教育目標を決められないのはおかしい」という立場は、政治的中立性と首長からの相対的独立性を教育委員会制度で担保する、現行の地方教育行政法を改正すべきと主張する。

首長が代わる度に教育目標が変わってよいのか、選挙に敗れた側の「民意」はどうなるのか、などの意見も出せるが、ちょっと違う観点から、教育目標を考えてみたい。

1.教育目標は、教育しようとする側の目標だから、教職員と教育委員会あるいは首長部局が何をするかが示されるものである。決して、「明るい子ども」とか「成績○点以上」といったことにはならない。それは、児童生徒の学習目標である。

2.教育目標を達成しようとすれば、それにふさわしい資源が試算、投入、評価されなければならない。「竹槍でB29を打ち落とせ」のような精神主義では目標は達成できないから、人的・物的・財的、さらに時間的な資源をどれほど用意できるかが、首長に問われる。

3.教育目標にどれほど近づけたか、それはなぜか、どうすればより達成できるのかといった評価に際の手続きを定めておく必要がある。それなくしては、次期の目標とそのための資源についての策定ができない。

よって、

1.「子どもを教育できる立派な大人か」-教育目標への、大人側の能力と決意はどれほどか。
2.「無い袖は振れない」-教育目標の達成に必要な資源は確保されているか。
3.「教育はサイクルになじまない」-教育をいかに測定、分析・評価、計画するか。

さて、首長にこうした教育目標を立てる覚悟はあるだろうか。
by walk41 | 2012-02-18 09:44 | 学校教育のあれこれ | Comments(12)
Commented by もくれん at 2012-02-20 23:32 x
「教育目標は、教育しようとする側の目標だから、教職員と教育委員会あるいは首長部局が何をするかが示されるものである。」
教育目標がこどもの目標になってることが多く。そのために何をするのかが考えられてないから、目標と評価が連動してなかったりするんですね。
Commented by walk41 at 2012-02-21 08:33
そのように考えてくださる学校関係者が増えると嬉しいです。教職員がなぜ、何をするのか、そしてどうだったのか。子どもがどうなるかはわからないことだけれど、自分たちが何をするかは管理、経営が可能(すべては無理だけれど)ですから。
Commented by もくれん at 2012-02-21 19:21 x
まず、やるべきことを明確にする。そのために必要な資源をどう確保するのかが、私たちの仕事なんだということがスト~ンと腑に落ちました。教育目標は教育する側の目標だと考えると、なんだかもやもやしていたことが、すっきりしました。なんとなく考えていたことが明確になりました。ありがとうございました。
Commented by walk41 at 2012-02-21 22:55
教員のみなさんと話をしていると、「教育」という言葉に子どもの「学習」も含めて捉えがちなように思われて、違和感があります。「教育」と「学習」を分けてこそ、教職員が自分の仕事をよりはっきりとさせることができると思うのです。
Commented by もくれん at 2012-02-23 19:16 x
教育目標を自分たちがする目標とする場合、どこまで具体的な表現で目標を
作ればよいのでしょうか。たとえば・・を教えていただくと喜びます。
Commented by walk41 at 2012-02-23 21:36
少しいじわるに、数値目標化した表現も加えれば、たとえば、

「1学期に1つ、新しいスタイルと思う授業を試みる」「この1ヶ月、満足のできる仕事ができたなあと思える教職員を増やす」「1週間に1冊、本を読む教職員を80%以上にする」「保護者からの苦情の電話が3割減る」「保健室にやってくる子どもが2割少なくなる」「「年度末、この学校から動きたいと思う教員がゼロになる」「教職員間の茶話会・飲み会を月に1回以上2回以内とする」…。

こんな感じではいかがでしょうか。
Commented by walk41 at 2012-02-23 21:42
もう少し加えますね。

「教育委員会の招集する会議が減る」「"ちょうちん"学校をやめて、光熱費を減らす」「病休の教職員がゼロになる」「教員が学校の配当予算とその使い途について、よく知っている」。

こんなことも大切な目標だと思います。
Commented by もくれん at 2012-02-23 22:16 x
お返事ありがとうございます。
このくらい具体的な目標だと評価は明確んできますね。ここでもう1点質問です
学校要覧等に本校の教育目標は・・と書く場合でもこの表現でいいのでしょうか。
Commented by walk41 at 2012-02-24 07:02
そうですね、学校要覧が誰に向けて書かれているのかに依ると思います。これまでは大方、作られていても当該校の職員ですら見ないものでした(教員免許更新講習で持参してもらうのですが、その時に「初めて読んだ」という声がたくさん!)。

たとえば、教職員の内輪向きのものであれば、こうした表現は一考でしょう。これに対して、保護者や地域住民向けであれば、業務内容の具体を示す必要はありませんし、却って意見をもらってややこしくなりかねません。そこでは、ぼやかした表現(たとえば、「最新の情報と発想にもとづいた授業をめざします」「できるだけ勤務時間内に職務を終え、健康な働き方を実現します」「より本音が行き交う『風通しの良い』職場をつくります」「ムリ・ムラ・ムダな職務について見直します」…という感じで良いのではないでしょうか。
Commented by もくれん at 2012-02-24 19:55 x
長々と私の質問に丁寧にお答えいただき恐縮しています。これまでのイメージからなかなか抜けることができず、学習の目標からの脱却は難しいですね。学校は。
Commented by walk41 at 2012-02-24 20:52
現在、ある県の教育センターと共同研究をしているのですが、学校に染みついたともいうべき言葉のつかい方を突き崩していくことには、大変な難しさを感じます。いつもながら、辛口になりますが、教職員は「良いことをしている」という前提が強すぎるのかも、と外部からは思うところです。
Commented by もくれん at 2012-02-25 10:49 x
とかく形にこだわっていると、本当にしなくてはいけないことがみえなくなって事なかれ主義で改善が図られないのではないかと思います。必要な資源の投入もできないですからね。「良いことをしている」という前提、厳しいですが納得します。
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