「事件は現場で起きている」
少なくない現職教員が好んで口にするこの言い方。1997年から放送された「踊る大捜査線」で青島刑事こと織田裕二が放つセリフ、「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ」を、学校を指して言うのだ。
「大学も教育委員会も、現場やん」て思いつつも、あまりに当然のように口にされると、一瞬おののいてしまうが、よく考えてみよう。このセリフは、学校という一つの「現場」で事実が起きている、とまでは言っているけれど、「だからどうなんや」と問い返されると、うんもすんも言えなくなる代物である。 現場で事実が発生する、それはそうやろ、どこでも事実は発生するからなあ。ほんで、その事実を現場はちゃんと説明できんのん? なぜこんなことが起こったんか、どうしたら「事件」を減らせんのか、わかるん? ところが、現場ではその説明はほとんど出来ないのだ。とりあえず対応するまでが関の山。だから、また同じことが繰り返される。あるいは、ある学校で起こったことが違う学校でも起こるかっていうと、必ずしもそうやない。似たようなことは起こってもその背景や展開は違ってたりする。 「不登校」ひとつ取り上げたって、エアコンの利いた部屋でファミコンしてる子もいれば、虐待されて家から出してもらえへん子もいるねんで。教員かって「学校替わったらこれまでの経験がぜんぜん活かせへん」って、よう言うてるやん。「指導力不足教員」のほとんどはベテランばっかしやで。これって、長いこと教員やってたら「いい先生」になるんと違うて、その反対でもあるってことの証拠とちゃうのん。普遍性はなかなか見つからへん。 つまり、「事件は現場で…」という言い方が、事実を説明できない、だから、これからもどうしてええかわからへん、という宣言やったら、わからんでもない。「学校教育はどうも説明できひんことが多い、せやからその場その場で凌ぐしかないんです」ということやな。 そこに登場するんが、研究者って呼ばれる観察者やん。その人らは、各学校を越えた視野から学校教育を見つめて、何とか共通項や傾向を見出せへんかな、あるいはどれくらいばらけてるんかな、ひいては予想でけへんかなって、データを集めて、並べて、考えてるんやん。 たしかに、この方向で研究者があんまり成功してへんことも事実やわ。その証拠に研究の蓄積とか累積ってほとんどないもん。50年前の授業と今の授業を比べて、今の方が上手いって言えるか? 無理やろ、そんなん。 せやから、ワシなんか、この方向で研究者の役割を考えんと、ともすれば理屈つけよとする見方に「そんなこと、ないんとちゃうのん?」てケチつけ、いや還元的・メタ的思考を促すこと、「もうちょっと気楽に考えたら」って伝えるのが自分の役割や、と思うようになってんねんけど。 ちなみに、「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」 (2003年)では、真矢みき演じる沖田警視正が、次のセリフを放つんやで。「事件は現場で起きているんじゃないのよ! 会議室で起きてるの。勘違いしないで」。この言い方には「現場軽視」って批判もあるけど、事実を「事件」に組み立てるのは、慌ただしい現場ではムリや。現場から「距離感」もって、落ち着いて考えられるからこそわかるんや、まさに岡目八目、という点では至極まっとうやないの。
by walk41
| 2012-04-06 18:22
| 学校教育のあれこれ
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