「若者は『石の上にも三年』で」と、60代女性の全国紙への投書。若い世代の離職率の高さを嘆き、もっと辛抱強く頑張ってほしい、と述べる。子どもへのしつけ問題と同じように、とんちんかんなことを書く人が絶えないのだなあと、ため息が出る。
厚生労働省がまとめる「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/dl/data_1.pdf
を見ればわかるように、この四半世紀、就職後3年目までに離職する者の割合は、中学卒でおおよそ65~70%、高校卒で40~50%、大学卒で25~30%で推移している。特段、大きな変化は見られず、ましてや離職率が次第に上がってきたとも言えない。おおよそ一世代の間、状況はほぼ継続しているのだ。
しかし哀しいかな、人は昔のことをなかなか覚えていないので、何となく「昔は良かった」と思いがちであり、その裏返しとして「今の人はだめだ」という論調になる。「今の世代は子どもの数が少ないうえ、飽食の時代に育ち、我慢することも足りないのではないかと感じます」と同氏が書いているのも同様だろう。
こうした論調に触れるたびに思わされるのは、人の記憶はいい加減なものでもあるということ、そして、教育問題とは、しばしば、老いた世代から若い世代への期待と羨望がごちゃ混ぜになった「批判」でもあるのだろう、ということである。