とても小さなことを扱うのが研究
ある中学校から、校内研究についての資料を受け取った。
いつからこんなスタイルでやることになったのか、誰が広めたのかわからないが、失礼ながら、研究とはおよそ思われない。これまでのブログでも似たようなことを書き連ねているが、だからこそ、重ねて抜本的に改めてほしいと願う。決して、「大学の研究とは違いますから…」というやりとりをしようと思っているわけではなく、ごめんなさいね、とにかく「ヘン!」なのだ。 1.研究主題があまりに壮大で、雲をつかむような話になっている。「人間力」という表現に至っては、中教審でくだらないお喋りをしているからいけないのだが、もう「何でもあり」で、大丈夫すかと尋ねたくなる。そもそも、すでに人間なのだから、人間力など何の意味も持ち得ない。他の動物ならばおもしろい議論だけれど。もっと小さな小さなことを取り上げなければ、「力」などつかまえようがない。 2.また、学校一般ではなく、義務教育学校として生徒に身につけてほしい能力・態度といった限定がなく、茫漠にすぎる。記される「表現力」「創造力」など、これも「何でもあり」で、当の学校がどんなことで「困っているのか」「悩んでいるのか」「願っているのか」が、さっぱりわからない(個人的には「創造力」を中学校までで期待するのはムリと思うし、そもそも、創造的かどうかを教員や大人が判断できるはずもない)。 3.生徒の現状分析が、これもまた失礼ながら、皮相で人間観のいわば奥行きや広がりが見られない。たとえば「コミュニケーション力の低下」とはよく遣われる言い回しだが、どういう状態を指して高いコミュニケーション力というのか、考察や吟味がほとんどないように思う。よく話をするならばそうなのか、話さなくても察することができることなのか、言葉によるのではなく非言語的な話なのか、いろんな問いがありうるのに、通り一遍で済ませているように思われて仕方がない。教員がもっともっと悩まなければ、研究主題や具体的テーマは成り立たない。 4.研究仮説が、「…の力を養うことができれば、自らの課題を発見し…力の育成につながるだろう」とある。この前半、「…養うことができれば」は、できないかもしれないという意味ならば、どうすれば養えるのかについて仮説を立てることを考えるべきである。また、「養えたならば、…の育成に…」の部分は、ほとんど同じことを述べていて、文章として展開していない。「雨傘を差していれば、雨が降っている状態といえるだろう」くらいの意味だ。、こうした同義反復(トートロジー)がほとんどの学校ではないか、とは言い過ぎだろうか。 5.つまるところ、学校が日々の取り組みをもっても「わからない」困ったこと、悩んでいることが明らかでないままに、「やらなければならない」ために、これまた失礼ながら、何となくやっているもの、おそらくはやっている人たちが何をしているのかよくわかっていないもの、これが校内研究の多くだろうと判断する。「何がわからないのか、がわかっていないこと」、この点をまず越えなければならない。 さて、このケンカ、全国の小学校・中学校の研究主任の皆さん方、ほんとうに買ってくれませんか。こちらは真面目にこの事態を憂いているし、こんなことに数百万円もの人件費が各学校で毎年投じられていることを悲しく思っています。もっと良い仕事をしてほしい。納税者がこのことを知ったら、憤ること間違いなし。だから、もう止めましょう、こんなこと。 子どもたちに毎日のように語っているでしょう。「自ら考え、行動する人間になれ!」って。
by walk41
| 2012-04-22 18:48
| 学校教育のあれこれ
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