可視化
NHK,クローズアップ現代、”密室”は開かれるのか。
違法な、あるいは不公正な取り調べを抑止するために、警察や検察での録音・録画の可視化を行うことが決まった。もっとも、例外規定があるので、現在のところ、可視化は全体の3割程度に留まっているという。 さて、これが取り調べ上、何をもたらすのか。緊張して本音が聞き出せない、暴力団関係など匿名を条件に聞き出すことができなくなる、あるいは、被疑者の二転三転する証言が記録できるため、起訴上かえって有利になる、さらには、可視化されていないところで恫喝めいたことが行われる、と色々な観点から指摘がなされ、議論が行われている。ちなみに、事前にリハーサルをして、その通りに録音・録画されるよう求める検事もいたという話もある(つい先日、どこかで聴いた話のような(^^;))。 この議論の行方も気になるが、学校教育に関心を持つ立場から興味深く思うのは、可視化されると「本当の捜査」と違うことが起こる、のは議論の前提にされているということだ。つまり、「見られる」と事実は変化する。このことは、授業研究や学校研究で当たり前のことと理解されてきただろうか。 教室でビデオを回し、録音・録画する。授業の可視化だ。こうした干渉によって、ビデオを回さなければ生まれただろう現実が操作され、違う現実が生まれる。見たい授業とは異なる姿が現れるのだ。 ビデオを回すまでもなく、保護者参観日のことを思い出せばいい。同日、子どもが叫んだ。「先生、カラーチョーク、初めて使ったね」と。教師も見られると変化する、ちょっとええカッコしいにもなる。当然である。 だから繰り返し言っているのは、そもそも、「本当の授業」の姿を捉えることなどできない、というスタートから授業について議論すべきではないか、ということ。見られていない時の授業を「より良く」することが目標ならば、見られているときの授業を見てもらっても、参考の域を出ない。それこそ、散々述べているのだが、「~すれば、~になる」という命題を追求しても仕方がない。その場で、参観者が十二分に干渉しているのだから。 昨年もある小学校で研究授業を参観したが、後ろに座っている児童に、「あんた、ここをこうやれば、できるでしょ」と児童に話しかける参観者の女性教員がいた。ちょっと待って。これで何を検証しようというの。露骨に干渉してるやん(-_-)。 もう一度いう。授業の可視化は、可視化されなければ生まれていただろう授業の姿を変えてしまう。だから、「授業を見よう」とした時点で、その見たい授業を見ることはできなくなるのだ。こうした難問の上に、授業について研究するとはどういうことなのか。教育方法論や授業研究論を看板に掲げておられる方々ほか、みなさんのご意見をうかがいたい。是非とも議論をしたい。
by walk41
| 2012-07-04 21:19
| 学校教育のあれこれ
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