見て見ぬふり
「先生、見て見ぬふり」 大津中2自殺・調査で生徒14人指摘
大津市で昨年10月、中学2年の男子生徒=当時(13)=がマンションから飛び降り自殺した問題で、学校が全校生徒に実施したアンケートに14人の生徒が「先生も見て見ぬふり」などと答え、教員がいじめを見逃していたと指摘していたことが5日、関係者への取材で分かった。 関係者によると、回答では「先生にも泣きながら電話で言ったそうですが、あまり対応してくれなかった」「先生に相談したのに解決してもらえなかった」と記入されていた。 ほかにも「一度先生は注意したけれど、その後は一緒に笑っていた」「先生も見て見ぬふりをしていたと聞いた」という回答もあった。回答は全てが伝聞だが、教員らが男子生徒へのいじめを知りながら適切な対応を取らず放置していた可能性がある。(京都新聞、20120706) ------------- もしも、もしも生徒たちの指摘するとおりだったのなら、学校研究は今なお改善策を提案できないことを、あるいは学校という現場は提案を実践できないことを、深く反省しなければならない。 古くは、新堀通也『見て見ぬふりの研究-現代教育の深層分析』があるが、仮に、学校という組織ゆえにこうしたことが起こるのだとすれば、その背景には次の点が指摘できる。 ①学校で起こっている事柄の多くは、誰が見てもそう見えるという客観的なものではなく、その場ならでは、その場限りの主観的で儚いものである。つまり、生徒からいじめがあると聞いても、すべての教職員が同じように理解する訳ではない。ある教師は「ふざけがすぎているだけ」、「一時的なもの」と、現状肯定バイアス(日常が変わりなく流れていると考えがちな認知上の歪み)も影響してか、考えることは十分にありうる。その結果、教職員にとっては、そもそも「問題」として現れない、つまり「いじめ」として認識されない。学校生活における事実を測定する客観的な物差しがほとんどなく、それぞれの主観的な捉え方に委ねられざるを得ないのである。 ②学校での業務の多くは、個業的、自律的であり、分業-協業的、連携的ではないので、クラスや学年を越えた問題として取り上げられることが少ない。つまり、仮に「いじめ」が起こっているのではと認識されても、自分が担当している学年やクラスではない場合、わざわざ口出しする必要はない、と考える。問題があったとしても、自分の分掌のところには直接の影響がないから、やり過ごすこともできるからだ。ちょっと聞いたくらいで、別の学年やクラスのことを指摘しても、「知らないくせに何をいうのか」と批判されるのがオチ、こんな損な役回りはごめんだ、と考えがちになる。どこで停まっても、完成品に至らない自動車の製造ラインとは大きな違いがある。 したがって、改善策を挙げれば、 ①小さな事柄と思われても、問題ではないかと考えるよう、センサーの閾値を下げるようにする。もちろんこれは、生徒の人間関係に過剰に反応、干渉することにもなるけれど。 ②学校の教職員は、すべての生徒の教育に権限と責任を負っていることを基本線として確認して、授業やクラス担任のいかんに関わらず、情報の交換と分析的・批判的な意見の交換ができる「風通しのよい」職場をつくる。校長、教頭、学校事務職といった管理職は、そうした風土づくりに心をくだくとともに、校内研修などを通じた場の設定に努める。 私としては、①に手を出すのは難しいと思うので、②を促す、つまり、この学校の使命、資源を中心とした環境、人的能力の課題や展望など、学級経営や教科経営といった枠では扱いにくい、学校全体についてまず視野に入れ、職務、年齢、性差などに関わりなく、話のできる雰囲気、「空気」を作り出すことが大切ではないかと考えているし、学校内外の研修、講演などの機会で、こうした方向に学校が向かうよう臨んでいるつもりだ。 学校教職員がみずからの職場の特性を知り、その上で、なしうることを考え、議論していくこと、それを可能にする働き方がいの一番に求められている、だから、「いやあ、忙しくって」と言っていては駄目じゃないと、叫んでいるのだが。
by walk41
| 2012-07-06 13:28
| 学校教育のあれこれ
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