「やりすぎんなよ」
議論をすべき場所で、感情的になるのが良くないのはわかっているけれど、この報道に接し、悲しくてしかたがない。
大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が昨年10月に自殺した問題で、同じ学年だった複数の生徒が、教師がいじめたとされる生徒の暴力行為を見ても、「あんまりやんなよ」と言いながら、ほとんど止めようとしなかった、という趣旨の証言を生徒の家族にしていたことがわかった。 生徒らは昨年12月、家族に直接証言した。それによると、担任教師の名前を挙げ、いじめたとされる生徒2人が亡くなった生徒に暴力をふるっているのに、「隣にいたが止めなかった。笑ってた。『やりすぎんなよ』って」と話した。ほかの生徒も同様の証言をし、「周りにほかの教師もいた」と話す生徒もいた。 生徒の両親が市と3人の同級生らを相手取った訴訟では、こうした教師らの一連の行為について、原告・被告双方が異なる主張をしている。原告側は訴状で担任教師が「プロレス技を仕掛けられ、半泣きになっている生徒を見かけ、『あまりやりすぎるなよ』と声をかけた」と指摘し、「いじめを何度も目撃しながら、漫然と見逃してきた」と主張。市は答弁書で、教師が「あまりやりすぎるなよ」と声をかけた部分を認め、行為をやめさせる趣旨だと主張している。(朝日、20120706) ------------ ネットの裏話系をのぞくと、事件当時の学級担任がどの中学校から異動してきたとか、校長が教育委員会の実力者であるとか、地域的な事情も絡んでいるとか、いろいろな情報や推定が飛び交っているが、それは取りあえず脇に置く。 自分がクラスメートに暴力を受けている最中に、教師の口から、しかも学級担任の口からこうした言葉を聞いたときの無念さを想像すると、辛かったやろうな、悲しかったやろうな、と思うほかない。 当の教師が「これはまずいぞ」と感じる危機管理センサーの閾値が高すぎた(鈍すぎた)ために起こった、悲惨な出来事。社会的な水準として許されない「人権感覚」がないほどの教師だったのだろうか。 「まあ、大したことないわ」と判断したことも問題だが、その判断に「ちょっとまずいよ」と批判的に対応しなかった同僚、そうしたやりとりを知らなかった管理職(知っていたら、大問題だ)、いくつものネットワークがありえたのに、いずれも形成されず作動もしなかったのだろう。 ともすれば相対主義に軍配を上げがちだけれど、この点は譲れない。およそ正統化されないルールのもとで、際限なく加えられる攻撃の中でも、これは許されない、と。 これが大津市のある学校に限らないとすれば、滋賀県、そして全国の学校にも現に存在する、あるいはこれからもあり得る、ということになる。学校教育の研究者たち、そして学校教職員とくに教員のみなさん、勝負どころですぞ。腹をくくって問題に向かわなければ。
by walk41
| 2012-07-06 22:29
| 学校教育のあれこれ
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