方略
何度も登場の話で恐縮。でも、今の学校教育を考える上でのエッセンスが詰まっているように思われるので、お許しの程を。
大津市の中学生いじめ自殺(に留まらないような話もあるが)事件。この中学校の「学校だより」から、学校名が判明、ネットでも取り上げられている。 以下に検討したいのは、同中学校から2011年11月に配布された「学校だより」。そこでは被害にあった生徒を「転落死」と表現しながらも、「友だち間の『あそび』や『じゃれ合い』の中で本人が嫌がることや不本意な暴力と考えられる行為がありました」と「いじめ」の存在を認め、その上で、 「(学校は)その責任を重く受け止め、今後このようなことが二度と起こらないよう手立てを尽くしていきたいと考えています」と、方略に向けた構えが述べられる。 学校教育に代表される公教育経営に注目する立場から見れば、「じゃあ、どんなアイディアがあるんやろか」。ミクロなマネジメントに注目すると、こう書かれている。「先ずは、生徒の心の安定を図りたいと考えています。自分の思いを文章に書き表すことで心のわだかまりを整理し減らしていきたいと考えています」。「書くことが苦手な生徒達もいますので、…教師と話す機会を増やすことにより、少しでも心が軽くなると願っています」。ちょっと待て、何やこれは。 心の安定、はあ? ここでは、次の論理のようだ。①「生徒には、心のわだかまりがある」、②「でも、それが文章を書く機会などが少ないために、表現できていない」、③「だから、そうした機会を増やして、表現することができれば、心が軽くなる」。④「心が軽くなると、いじめも減る」。アンビリーバボ-、冗談か。馬鹿も休み休み言え。 中学生という時期、人生でもっとも自分に一番の関心があるときに、「心を軽く」、真面目にゆうてんのか、ほんまに。この頃は、自分のふがいなさに悩み、将来の展望が見えずに悩み、家族や友人関係に一番悩む時期やないか。その時期に、「心が軽く」?。本当に腹立たしい。この時期ほど、心重く、自分について考える時期はないというのに。高齢者みたいに、もう早くもこの時期に「悟って」どうするんや。 しかも、「心が軽くない、重い」といじめになる? もう呆れるぞ。この「学校だより」は続ける。「不安や不満、悩みなどが鬱積すると、それがいつか爆発したり、他人を攻撃したりしてしまいます。このような状態も『いじめ』を誘発することにつながります」と。こんな分析、これが曲がりなりにも「教育の専門家」? あのね。不安や不満があって他人を攻撃することがないとは言えないけれど、この中学校の場合の「いじめ」は、彼らの「正義」の行使なのだから、もっと明るく、晴れやかなの。「悩みが鬱積しているのは、被害にあった生徒」であって、加害者ではない。対人不安は「ひきこもり」を招くだろうが、学校で公然と暴力を振るう様を指して、不安? この中学校の分析がかくもお粗末だということは、今なお少なくない先生が振りかざす(ごめんなさいね)「実践が一番」なんていうことが、いかにナイーブで、貧弱なものかを示している。 私の見るところ、このケースは、加害者が、「私刑」として白昼堂々と「いじめ」という「正義」を行使しており、不安や不満の表れではない(ここで「表れではない」と述べているのは、行為を直接説明する要因として、の意味。何ら不安、不満のない人がどれほどいるだろうか。だけれど、「老後が不安だから、駅員に暴行を振るった」という説明は成り立たない)。 もし、「学校だより」の通りなら、学校は教育問題を部分的であれ「専門」的に担う機関として、まったく誤診していることになる。誤診の上に、治療方針を立ててもお門違いなのは明らかで、その結果、「いじめ」問題の改善に何ら貢献しない。 いくら、「多忙だ」「人員が足りない」なんていっても、こっちは動じないよ。そんなことは、問題の本筋から外れているもの。「子どものための教育を」と唱道する教職員組合のみなさんにも言いたい。あなたたちの基調もこんな感じですか。だったら、組合なんてもう要らんな。ぜんぜん子どもを守らんもん。 ミクロな経営である学校教育実践の分析(診断)と方略(処方)において失敗する学校って、どんな教育機関なのだろう。税金で維持される必要がどれほどあるの、と納税者に言われたら、どんなふうに返答するのだろうか。ちゃんと納得のいく説明ができる。 かなり情的な書き方になった。失礼。でも本当にがっかりしている。諦めてはいけないのだけれど、そんな気持ちにすらなる。どうぞご寛恕のほどを。
by walk41
| 2012-07-08 20:38
| 学校教育のあれこれ
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