満身創痍の論理
高岡信也さん「教員養成、質を高く」と(日経、20120813)
いずれも教職課程を持つ大学の「覚悟」を迫ると、3つのポイントを挙げる。⇒以下は、私のコメント。 1.大学院修士レベルに基礎資格を引き上げること。⇒この手の議論にいつも引き合いに出される「欧米では…」という「…では」(出羽の守)の話から来ているもの。ドイツ :確かに修士課程への移行が進んでいるけれど、その狙いの一つは、学士課程で教職に就くことを決めなくても良いという流動性・柔軟性を保つため。学部でそれなりの教員養成をしている日本でさらに上乗せする必要性は導けない。フランス(これは受け売り):ジョスパン法以降、学部段階で各専門を学んだ学生が大学院で2年間の教員養成を受けるというもの。つまり、教員養成期間は2年間。なあんや、大学院で初めて教員養成が始まるだけのことやん。日本で修士レベルに、って聞いたら6年間をイメージするもんね。これって詐欺的とちゃう? 2.学び続ける教員像の確立。⇒基礎資格に加えて専門免許状制度(仮称)を設けるとのことだが、教員が学び続けることと資格とのリンクは矛盾すらする。なぜなら、資格を公証する限り、授業名、時間数などカリキュラムを要するから、「あてがい扶持」のものにならざるを得ない。教員に限らず大人も生徒もそうだが、学ぶとは自分の世界と出会った世界とをつなげたり、両者の不整合を解消しようという動機から始まるから、一様なカリキュラムがこれに該当するべくもない。「この専門免許状とりたい訳やないんやけど、校長や指導主事がうるさいし」と学ぶ意欲を低減させる効果は期待できる。 3.大学と行政との連携・協働の実現。⇒これまでも多くの大学教員が教員研修に関わっているし、私などそれをタネに論文まで書いているほどだ。まあ、こう強調してもいいけれど、だから何なん、何を変えようとすんのん、というところ。大学での教員養成を止めて教育委員会に全面移管しましょうとか、反対に、各地の教育センターをなくして大学に一本化しましょうとか言ってくれるんなら、ともかくも。 以上、誰が絵を描いたのかは知らないけれど、初めからあった結論、教員養成の大学院への拡充とそれに伴う免許状の3種化を導くための、苦しい弁明に見える。もっと多面的に分析して提案しなければ、およそ議論に耐えられるものではない。 たとえば、1.教員養成期間の長期化がもたらすメリットとディメリット、2.教員の学びが公証されることのメリットとディメリット、 3.大学と行政の一本化ではなく連携・協働であることのメリットとディメリット、これらの比較考量を経なければ、議論したなどとは言えない。何回も会議を開いて「やりました」というアリバイづくりの域を出ないよ。 それにしても、こうしたバランスの悪い議論をする人が教員研修センターの理事なんて。教員研修センターそのものの存続を議論してはどうだろうか。
by walk41
| 2012-08-14 11:30
| 学校教育のあれこれ
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