マクロレベルの規定力
衆議院総選挙の開票が続いている。
どのような結果になるかはともかく、マクロレベルの中央政府のありようが、都道府県と市町村の地方政府、各学校、さらにはそれぞれの教職員の働き方にどのような影響を及ぼすのか、あるいは及ぼすと考えられているのか、確かめる必要があるだろう。 学校教育が、文部科学省-都道府県教育委員会-市町村教育委員会のラインで、ひと、もの、かね、が大きく影響を受けていることは確かだ。ひと:教員免許法、教職員定数など、もの:学習指導要領、教科書、施設・設備基準など、かね:教職員給与、補助金など、いずれも学校の実際を大きく左右するものではある。ただしこれらは、制度や仕組みを改変するために多くの労力を要するので、即日変わるということはありえず、数年を要するものも少なくない。そうこうするうちに「政権交代」ということも起こりうる。 これに対して、ミクロレベルたとえば教室における教師の振る舞いや言動は何に規定されているのか。校長といえども、子どもの呼称や挙手の仕方、あるいは「ペン回し」のような非言語コミュニケーションに関わるルールを設定することはできない。それらは、各々の教師に委ねられ、状況の認知と教師の感情、そして引き続く行為は、その場ごとに生じることになる。これらは、マクロやメゾレベルのありようとは距離をとり、各学校や各教室で、自己言及的に生成、展開、消費されているようにも見える。 こうした公教育実践上の自律性、裁量あるいは余地が幅広く認められることから、ドイツでは「教育上の自由(paedagogische Freiheit)」の法制化に至っているが、これが各教師のものの見方(「観」)が生まれる基盤を提供する。つまり「教師それぞれのやり方がある」ことの根拠とされるのだ。 だれが首相になろうが、どんな文部科学省の教育政策が示されようが、教室の中に大した変化は起こらない。それは教師が、あるいは教師すら客体化される子どもという存在を抜きに授業や指導を語ることが出来ないからだ。-こうした見方はどれほど確かに現実を説明できるだろうか。それとも、新しい事態を迎えることで、再解釈を求められることになるだろうか。 中央政府の新政権が発足するこれから、ミクロレベルの学校教育の理念と現実は、マクロとメゾのレベルから、最前線の学校教育を規定しようとする動きに対峙することになる。はたして、教室の現実はどのように変わるだろうか。
by walk41
| 2012-12-16 23:47
| 学校教育のあれこれ
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