人気ブログランキング | 話題のタグを見る

学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

2015年をめざす教育計画

ドイツの南西に位置するバーデン-ヴュルテンベルク州は、2011年3月の州議会選挙でSPD(社会民主党)とGruene(緑の党)が勝利、緑の党のWinfried Kretschmann氏が首相に就いた。CDU(キリスト教民主同盟)が一貫して政権を担ってきた同州では、大きな政権交代という歴史的な出来事であった。また、2012年10月には、州都Stuttgart の市長選で、緑の党のFritz Kuhn氏が当選を果たし、同州にはいま緑の党の風が強く吹いていると言ってよい。

この政権のもとで、2015年の教育計画(学習指導要領と解してよい)改革を目指す専門会議が発足した。前回の計画は2004年に出されたので11年後の改訂ということになる。以下、 12月19日の同州文部省の広報から。

文部大臣Gabriele Warminski-Leitheußer(SPD)は、227人の教員で組織される専門委員会のスタートにあたって次のように述べた。「委員会における教員みなさんの専門知識、明晰さと視野が、最終成果の質にとって決定的です。その目的は、教育過程の一層の一貫性と公正な教育システムを創造することにあります。」

これら委員会は、普通教育学校および職業学校等の教員の他、教授・教員養成のための州立ゼミナールスタッフから成る。彼らは2015年7月までに、基礎学校および中等教育段階Ⅰの教育計画を策定する。そこには、義務的で共通する、さまざまな種類の学校において生徒が学ぶことのできる基礎となる教育スタンダード(Bildungsstandards) が含まれるギムナジウムの教育計画については、とくに8年制の教育課程(G8)について留意されることからギムナジウムの専門家を加えた拡大委員会が編成された。「G8は、(9年制から)短縮された期間であることを考慮して、別途検討されなければならず、独自の教育計画を持つことになる。もっとも全ての教育課程に有効な教育計画と適切に合致するものでなければならない」と文部大臣は説明した。G8の教育計画を扱う専門委員会と他の専門委員会との内容的・人的なつながりは不可欠である。他の教育課程からG8課程に問題なく生徒が確実に移動できるようになされなければならない。

「2015年の教育計画改革は、これまで以上に広く公共の参加の下に行われる」と文部大臣は強調した。市民は自分のアイディアと提案をオンラインの参加ポータルに載せることができ、「いっそうの市民参加により同省を盛り上げ、オンラインの取り組みを意味あるものとしたい」。2013年2月に同ポータルが出来上がる予定である。

教育計画の策定にあたっては、生徒の学習プロセスが踏まえられ、具体化される。これにより子どもや青年たちはそれぞれの才能にふさわしく促される。教育内容を明確にすることを通じて、教員は授業に向けた信頼できる基礎を獲得できる。2004年の教育計画では、コンピテンスと内容がしばしば混在し、内容は部分的にあまり正確ではなかった。多くの教員がそれゆえ、内容と離れてテーマを扱うことになり、試験の準備としてはベストと言えるものではなかった。新しい教育計画は、この点でいっそう確かで明瞭になるべきである。「教育と継続的な発達・発展」「消費者教育、日常文化、健康」「予防・防止」「システム的な職業と学修オリエンテーション」「徹底的なメディア教育」が教育計画において繋げられることになる。

新しい教育計画では、就学前教育の領域と基礎学校との間の連携、あるいは普通教育学校と職業学校との連携についても改善される。文部省は教育システムの一貫性をより高めることを目指しており、これまでのさまざまな学年や教科の組み合わせの内容を一貫性の高いものにする。これにより、インクルーシブな教育機会を高め、特別支援学校での教育活動との恒常的なつなぎを不可欠にもするのである。
---------
いかがだろうか。①学校間の整合性について、普通教育と職業教育、就学前教育や特別支援学校を視野に入れて議論されていること、②到達すべき目標としての「教育スタンダード」を踏まえた内容とコンピテンスを目指していること、③議論を公開するだけでなく策定過程に広く意見を求めること、④テーマに、健康や予防などが含まれていること、などに私は注目する。日本の学習指導要領改訂との共通点、相違点はどんなものだろうか。
by walk41 | 2012-12-22 18:49 | ドイツのこと | Comments(0)
<< わかりやすい授業 愛おしさ >>



榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
フォロー中のブログ
最新のコメント
共著論文、掲載&公刊され..
by 土肥いつき at 18:24
yoralyさま、はじめ..
by walk41 at 14:51
Hanna Arendt..
by yoraly at 18:58
はんすさま コメン..
by walk41 at 15:50
さかきばら先生、こんにち..
by はんす★ at 12:22
堀口くん、お久しぶりです..
by walk41 at 20:31
生徒の感情としては関係性..
by 堀口渉 at 00:33
さすらいの教師さま ..
by walk41 at 15:34
こういった事例を聞くに(..
by さすらいの教師 at 09:48
本ブログを拝読する中で、..
by さすらいの教師 at 10:27
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
こんなことがあるなんて
at 2024-03-21 21:31
サンクコスト効果
at 2024-03-20 07:13
わかりにくい
at 2024-03-11 20:15
人類
at 2024-03-09 07:42
トランプ
at 2024-02-29 17:15
それぞれの学校
at 2024-02-27 08:28
「教員不足」とその対応
at 2024-02-22 07:31
fight-or-fligh..
at 2024-02-18 09:32
仰げば尊し
at 2024-02-15 15:51
誰にもどこでも承認される生徒..
at 2024-02-11 16:21
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧