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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

人を死なせない教育?

若手の社会学者、古市憲寿「学びのふるさと」(日本経済新聞、2013.1.18)、学部時代、アフリカのコンゴで小学校建設に取り組む教授の話を語る。

…少人数でいろいろな話をしました。その中で、何のために教育に携わっているのか、その言葉が特に印象的でした。「教育の目的は、人を死なせないこと」。価値観というのは多様で、教師が「こういう人材に育てたい」というのはおごりですが、人を死なせないというのは根本的で普遍的な価値観だと思います。…

なるほど。これは学校関係者に耳の痛い話だなあ。自殺さえ出してしまいかねない(「人を死なせない」の真反対である)ような教育も行われており、叩いたり、蹴ったり、殴ったりすることも決して珍しくはない世界で、「死なせないことが目的」と言われてしまうと…。

だから、「必死に」ではなく、「ほどほど」にやること、「まあ、どう受け止めるかはその人次第だから」とゆとりを持つこと、こんな発想と行動が大切なのだろう。しかしながら、この次の瞬間、「それでは教育しないと同じことではないか」と反論も起こる。そうなのだ、教育という言葉を遣っている限りは、「今のままじゃ駄目なんだよ」とひょっとしてひょっとして「死なせること」にもつながるようなメッセージを発することは避けられない。

これに替わる「教育-学習関係」はありうるのだろうか。守破離の考え方に拠れば、まず型を与える段には優しく、励まし、そしてなるべく早いうちにこの段階を終えること、そして個々で学習できる機会や仕掛けを講じることだろう。型の獲得に向けて励ますことも大切だけれど、早く破っていけるようなつもりもすること、ここにも柔軟で「徹底しない」姿勢、「熱心さ」と距離を取れる能力が大切だと、重ねて思わされる。
by walk41 | 2013-01-20 15:12 | Comments(2)
Commented by ryota412309 at 2013-01-20 19:10
いつも読ませて頂いております。
最近同じようなことを考えさせられます。

例えば、体罰などは目に見えるので確実にわかる。それに禁止されていることであるから境界がひきやすいです。
しかし、体罰はなくても厳しい教育に耐えられずに同じような場合はどうなるのであろうか。
どこまでが許されてどこまでが許されないのか。(もちろん教育者である以上相手の容量を見極めて相手に適した指導を行うことが求められることは承知の上ですが。)
突き詰めていけば何も指導が行えなくなる時代がきてしまうのではないであろうか、という危惧すら感じさせるこの頃です。
Commented by walk41 at 2013-01-20 21:50
ryota412309 さま、

コメントをありがとうございます。ご自身もexciteブログを記されているのですね。

「指導」という言葉の曖昧さは、酒井朗氏ほか既に指摘されるところですが、明瞭に「教授」とは言えない部分を含む便利な言葉のように、私は捉えています。

もしそうだとすると、その「割り切れなさ」ゆえに時として死と隣り合わせるようなことも起こるのでしょう。教育基本法第1条に「教育は人格の完成を目指し」とあることも関わっているように、私は思っていますが。

目の敵にして申し訳ないのですが、大阪での事件のほか、部活動はその傾向を一層強めるようです。「体罰」問題など、教員が自身の「教育への信念」にがんじがらめにされているのかもしれませんね。
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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