芯の通った学校組織
大分県教育委員会が公表している、「芯の通った学校組織」推進プラン。
学校がいかに目標(芯)の通った組織となるべきかが述べられているが、これがより実効するために、どうすれば目標が教職員全体のものになるかを考えてみたい。 学校の業務が職員一人ひとりに委ねられる個業性に富み、それぞれの授業や学級で「出たところ勝負」な対応を余儀なくされることは明らかだ。なぜなら、校長がいかに目標を掲げようとも、あるいは教員がそれに沿うように励んでも、児童・生徒という学校には不可欠でありながら、学校の教育目標実現に必ずしも協力的ではない存在が認められるからだ。また、彼らは「児童・生徒」と一枚岩で捉えることができず、まさにケースバイケースの、授業ごと学級ごと、あるいは年度ごとに多様である。このために、短期間の意思決定が連続するのが実際的であり、数年間を跨ぐような目標設定は必ずしも妥当と言えない。 その一方で、教職員は個人では仕事をすることができない。学校やその設置者がいわば自分の後ろ盾にいてこそ、業務に就くことができる。これは組織人、つまり教員であることを意味しており、決して教師ではないのだ。文部科学省をはじめ、「教師教育」という言葉も遣われているが、その不適切さは明瞭である。制度的・組織的に教師なる人物は存在せず、観察されるのは、教諭、教職員、職員、教員なのだから。学校は、教室や体育館などの施設を誰かに貸しているのではなく、学校の名前において、組織構成員である教職員の業務を保障しているのである。 つまるところ、教職員とくにその最大数を占める教員は、一方で個々の児童・生徒に対応しつつ、いわば最大公約数的に学校の目標達成に努力する位置を与えられる。この両者は一致しない場合もあり、前者に偏ると「マイ・ルール」で暴走する教員を生み出すことに、また後者に偏ると、官僚制の逆機能が生じて「個に応じた指導」の原則と葛藤するといった、すぐれて両義的(ambivalent)なのだ。 この特性を踏まえつつ、目標が構成員のものになるためには、風通しの良い風土や雰囲気を生み出すこと、すなわち互いに認めあい、批判しあえる素地を学校に作り出すことだろう。「見て見ぬふり」をなくし、年長者優位の構図もなくし、論理的・感情的に各々の考えと思いの行き交う場を、職員室ほかで生みだすようにコミュニケーションを交通整理すること、これこそが学校管理職の役割である。 学校の各状況を持ち寄り、議論し、達成しうる目標に向けた修正や評価を含めつつ、構成員の満足や成就感を得ること、そして、来年度もこのメンバーで仕事をしたいと思えるようにすること、これでこそ、芯の通った学校組織だろう。多少の辛口も互いに聴く耳を持つこと、何より思っていること、感じていることをより正直に表出できる学校であること、著しい自己抑制から解放させるような「やりがいのある学校」づくりが、目標の達成という結果を導くのである。
by walk41
| 2013-02-11 23:34
| 学校教育のあれこれ
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