学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

誠実に仕事を

学校外の教室で、子どもに英語を教えている知人が憤っている。

聞くと、中学校1年生の生徒の書いたアルファベットが、学校の教員に「間違っている」と指摘されただけでなく、テストで減点までされたことが、まったく理不尽だと言うのだ。

おおよそ話が了解できたので、私なりに言い換えると、①アルファベットの「正しい」書き方はどれほどのストライクゾーンを持つのか。たとえば「g」の末尾は右に突き抜けてはいけないのか、「a」の末尾は右に流れてはいけないのか、「f」の始めは、一番上まで一度上げてから下ろさなければダメなのか、「r」の末尾は右に流れるまで引っ張らなければならないのか。

知人は、外国の友人からの手紙も見せたらしいが、「u」「m」「n」「w」「v」の判読がとても難しいくらいだ。でも、単語の流れでわかるから、大した問題ではないとも言える。読み間違えて仕方がないようならば注意も一案だが、まあ教員の好みかのような話で生徒を評価するのは奇妙である。せいぜいのところ、朱書きで一意見を指摘するくらいに留めるべきだろう。にもかかわらず、内申点にも響きうる点数として評価するのは、明らかにおかしい。

②さらに問題は、減点までするほどに生徒にある形を求めていながら、教員自身は教えたとおりの書き方を、授業中に示していないということだ。「M」の書き順や形に拘るのに、自分が板書する時には一筆書きのようにしているというのが生徒の言い分だそう。教えた通りでなくても構わない、取りあえずということやから、と言うのであれば、まだ可愛げがあるが、それで生徒の減点をしていながら、自分はそれに即していないというのであれば、嘘つきになる。

③同様に深刻なのは、かくも大事なことと生徒に強調しながら、同じ中学校、あるいは近隣の中学校には、まったく意に介しない英語教員もおり、いわば教員の「当たり外れ」で生徒への対応が大きく異なるということだ。ある中学生は「センセイが代わったから良かったわ。今度の人は何も言わへん」って。これって、自分が大事と思っているはずなのに、近くの同じ教科を担当する教員とはやりとりや議論をしていないだろう、ってことになる。

子どもの矢面に立っている先の教員は、ALTの筆記に何も言わないらしい。これって、まさにダブルスタンダード。自分の指摘は、それほど大事なことではないって公言していることになる。それならば、生徒に対してもさほど拘らなくてよい。意気盛んな(「意欲の高い」!)生徒が教員に「どうなんですか」と尋ねたらしいが、答えは「そういうことだ」と説明になっていなかったらしい(生徒の話の限りでは)。これでは教員の生徒からの逃走である(佐藤学「学びからの逃走」などと長閑な話をしている場合ではない)。

「そんな小さなこと」まで拘る点で、「教育熱心」とも言えるけれど、それがある意味で現実離れしていたり、同僚と意見交換や議論していないとするならば、ほとんど自己満足と言われても仕方がないだろう。そんなことに時間を使っていながら「多忙で大変」などと言わないでほしい。生徒からすれば、文句を言いたいけれど言えないパワーハラスメントに遭っていると受け止めているのだから。

つまるところ、「正しい」ことはあまりないのかもしれない、だからこそ、迷いながら仕事をすることが大切なのだろう。「とりあえずはこんな感じかな」とか「自分はこう考えるけれど、絶対そうとは言えないかもしれない」と相対的な言動を生徒や同僚に示すこと、もって、関係者と一緒に考え、意見を交わすことで、教員として生きていくための糧を得ることができる。

大して確信のないことを「子ども相手だから」と手を抜かないこと。疑問に思ったらちゃんと調べ、同僚と意見を重ね、一つの結論を得ること。わからないなら、取りあえずはと答えること。そんな「真っ当な仕事をしている」と教員のみなさんは、胸を張れるだろうか。大学教員を含め、振り返ってみたいと思う。
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by walk41 | 2013-06-01 21:12 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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