問題の立て方はすでにここに
昨今は大学でも教員採用試験を全面的にサポート、本番も近い今、模擬面接などを行って、結構な時間を投じる。
さて、この試験に臨む学生たちに用意された質問例を見ると、「授業中に立ち歩く子どもがいます。あなたはどのような指導をしますか」「なかなかあなたに話をしてくれない子どもがいます。あなたはどうしますか」「個性をいかす指導をするとはどのようなことですか」という感じの文章が並んでいる。なるほど。 もちろん、すべてがこうした調子ではないけれど、私の見方の歪みが著しいためだろうか、①問題や課題が児童生徒にあり、②それらに対して教員としてどうするか、という文法に則る質問例が多いように思われて仕方がない。 面接に臨んだ学生たちには話したが、「どうするのか」という実践の前に、「どう見るのか」という分析が求められるのではないか。つまり、分析の上に、ありうる実践を構想するという手順になるのでは。そして、教員じしんのあり方をどのように変えるべきか、また変えうるか、について目を向けることが大切では、と。でも、こんな手続きを経ていては、試験に合格しないのかもしれない。それって、教育委員会の自殺行為だと個人的には思うのだけれど。 小学校、中学校に伺って、教員たちが話し合う様子にどうしても感じてしまう違和感-自分たちに問題はなくて、課題は児童生徒にあり、それを改めるようにいかに「指導力」を発揮するか、という基調-の源が、ひょっとして教員採用の段階から見いだせるならば、この文法に長く馴染むことになる教員の発想と振る舞いを変えることはまったく容易ではないとわかる。「食べ物に感謝の念が足りない子どもをどう指導するか」「挨拶をいかに徹底させるか」「夢を持っていないために学習意欲の低い子をどう導くか」と考えがちな教員たちを、である。 おそらく、多くの仕事においては、「うまくいかないのは自分たちに何か問題があるから」と発想するだろうに、教職の世界ではその逆に、「子どもたちに問題があるから、それを教育力で打破しなければならない」と「正義の旗」を掲げるようであれば、自己革新など望むべくもない。自分を改めることを通じて、周りが変わっていくという発想が大手を振って学校の議論に登場するのは、いったいいつになるのだろうか。
by walk41
| 2013-07-03 19:13
| 学校教育のあれこれ
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Comments(2)
それそれそれで~~~す!!!!
榊原先生、まさしくそれ。 ここ、5年ほど、感じてきた違和感とは、それなんです。 自分も前はそうだったんだろうなぁと反省しつつ。 海外での研修プログラムに参加したり、英語学習を兼ねてネット上の英語の論文や洋書を読んだりして、視野が広がったというのはあります。 日常的に英語を読んだり聞いたり話したりする学習をしていると、自分の話す日本語も直截になるという傾向があります。あまり含みを持たせずに、ズバリ言うというか、短い文で言うというか。ただ、それだと、お子さんたちには伝わらないこともあるので、ビジュアル的に話すことが多いですね。お子さんたちは、よく、私の話をげらげら笑いながら聞くことが多いです。こちらとしては、まじめに話しているつもりなのですが、表情とか身振りとかがやたら大きいようで、それがおかしいと。 まあ、お子さんたちに話すときには、もう一つ、エピソード的にストーリー的に話すということも心がけていますけ。 で、校内研修でも、「教員である自分も、授業を大きく左右する要素として、見なくていいのか。」ということを何度か訴えましたが、共感してくれる人はいませんでした。
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by
walk41 at 2013-07-04 19:30
ポッピーママさん、コメントをありがとうございます。札幌と岩見沢に行きましたが、涼しくてびっくりです。
さて、現職教員への集中講義でも強調することです。「みなさん、教材研究とは言いますが、教員研究とは言いませんね。でも、教材よりも教員がどうあるかが、授業を決定づけているとは思いませんか。どんな教員として子どもの目に映っているのだろう、あるいは好かれているのだろうか、嫌われているのだろうか。そんなことが、授業では重要ではないのですか」と。 思うに、自分を変えることには向き合いたくない教員が多いのではないでしょうか。だから、自分と不可分のはずなのに「教材」、さらには児童生徒の「問題」を指摘して、これを変えることに躍起になる、という構図です。階より始めよ、でしょうか、その勇気をお互い持ちたいものですね。
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