学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

そのようにできる教員なのか

前宣伝です。「校内研究における『仮説-検証』問題」という論文を書きました。順調に進めば、この9月に発表されます。ネット上にも出ますから、ぜひ読んで下さいね。

さて、これを書く中で改めて思わされたことの一つが、実に多くの学校で用いられている用法、「~すれば」という表現の奇妙さです。

たとえば、「○○において、○○すれば、○○であろう」と研究仮説の書き方を指南する教育センター(千葉県、宮城県、北海道など)のひな形を受けて、「各学年の国語科の授業において,思考を深める発問や手立ての工夫と改善を行えば,より深まりのある授業を展開することができ,文章を正確に読む力や自分の考えを持つ力が身につくであろう」(沖縄県、小学校)、「基礎・基本を明確にし、かかわり方や言語活動を工夫した授業を行えば、主体的に学び、分かる喜びを味わう学習活動が創造できるであろう」(熊本県、小学校)、といった、何をすることが「工夫」なのかが示されていないものがあります。

あるいは、「授業の中で学び合いの活動を取り入れることで、学ぶ楽しさを味わうことができれば、学習に積極的に取り組み、向上心を育成することができるだろう」(大分県、中学校)といった同義反復(トートロジー)や、「(1) 教師一人一人が学習観の共有を図る。① 作業,活動的な学習を取り入れる。② 男女混合4人グループの協同学習を取り入れる。③ 表現の共有の場面を設定する。④ できるだけモノ(具体物)を用意する。⑤ 机をコの字隊形にする。⑥ 教師の言葉をやわらかくする。⑦ 子どもの話をじっくりと聴く」(茨城県、小学校)といった「学びのシステム化」も散見できます。

十把一絡げにやや乱暴かもしれませんが、これらに通じるのは、教員の発想と振る舞いをどのように変えることで児童生徒に影響を及ぼしていくのか、にほとんど見るべきものがないということでしょう。例の最後、「⑥ 教師の言葉をやわらかくする。⑦ 子どもの話をじっくりと聴く」は、教員に言い及んでいるものの、こうした振る舞いは、これまで教員においてなされてこなかったのでしょうか、とても不思議です。

子どもに丁寧に接する、ということが「理論」かのように語られることに、学校が大学等(しかも「有名」な!)の権威にいかに弱いかが示されています。ごめんなさいね、こんな言い方して。でも、そんなん当たり前やん。それとも学校では「そうや、教師の言葉がやわらかくなかったら、あかんねや。それに、子どもの話をじっくり聴くこともポイントやって。さすが大学の先生は言うことがちゃうなあ。すごい発見や」って感嘆の声が上がっているのでしょうか。さっぱりわかりません。

詰まるところ、①これまで、どのような「工夫」をしてきたにもかかわらず、「問題」があると捉えているのか、というこれまでの振り返りがなく、今年から始めて取り組むかのように語られる文面、②「雨傘を差している人が多ければ雨と言ってよいだろう」と同じことを繰り返す文面、③個人的体験である「学び」という言葉を用いながら「いつでも、誰でも、どこでも」できるシステムを志向するという矛盾した文面、いずれも、教員自身がどのように変わりうるのか、あるいは難しいのか、について悩んでいない、いわば「お手軽な」研修を目指していることがわかります。「簡単にできる、すぐ結果のわかる」実践を多くの教員はしたいのでしょうか。

このように言い換えてもいいでしょう。「~すれば」という用法にしたがっていますが、はたして教員はそのようにできるのでしょうか、そして、そのようにできるためには何が必要なのですか。ベクトルを自分に向けて、「う~ん、なかなか難しいわあ」と呻吟されているでしょうか。教員が葛藤すること、それを通じてしか授業を変えることなど画餅に過ぎないと思うのですが。ぜひ批判を頂戴できませんか。
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by walk41 | 2013-07-05 09:15 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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