集団圧力を駆使する教員
引き続き、学生のレポートを読む。授業によっては、現職教員を講師に招き、学校での実際を伺う機会があり、レポートでもどのように聴いたかを問う課題を出している。
ある学生は次のようなことを書いてきた。講師の話が終わったあと、榊原が「クラスの中には、行事ほかみんなと一緒にやりたくない、という生徒も何人かいるのでは?」と質問したころ(これは、やんわりながら、教育実践の暴力性について尋ねたのだ)、講師が「そんな時は、他の生徒たちに、みんなやるよね、と声を掛けて、周りからやるという雰囲気を作って行きます」旨の発言をされた、一連のやり取りについて、この学生は「とても参考になるやり方で、自分も教員になったらやってみたい」と感想を述べていたのだ。 それ、あかんって。決してこの手を使わないとまでは言えないけれど、集団圧力を駆使するこの方法は、非論理的かつ非民主的であり、「よくわからないけれど、みんながそう言うのなら、仕方がない」という、理解力に乏しく主体性も欠ける子どもにしかねない。 この手が多用されると、「みんながええって言うんやからええやん」と過半数主義を振りかざすことになり、少数(最大では49%にもなりうる)を軽んじる民主主義社会への脅威を導きかねない。さらには、少数を排除、抑圧することが正義という立派ないじめにもなりうる。いじめは正義を振りかざすことからも生まれるのだ。 かくも、あるやり方を真似る前に、そこには価値や規範が横たわっていることを知らなければならない。これが、とりわけ最前線にいない学生や、学校からいっとき離れた教員が取り組むべき課題だろう。やり方を知ってもそれに飲まれず、踏ん張る力を身につけて欲しい。思考体力とはそのようなものだ。
by walk41
| 2013-07-23 10:20
| 学校教育のあれこれ
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Comments(2)
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やまと
at 2014-01-12 21:33
x
榊原先生、こんばんは。
質問なんですが、先生は行事に参加したくないという生徒には、どのように対応するのですか? 自分がこの立場だったならば、講師の先生と同じ対応をしてしまうような気がします。
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walk41 at 2014-01-12 22:14
やまとさんへ、コメントをありがとうございます。
ご質問にお答えしましょう。その一、「学校行事だから参加するのが当たり前」と発想するような、シンプルな教員には、くれぐれもならないでということ、その二、「みんなやるよね」と同調圧力を使って、本人の考えや判断を等閑視し、にもかかわらず「自ら進んで参加した」ような意味を与える、「狡い」教員にならないでということ、です。 もちろん、色々と枠づけられてこそ成り立つ学校ですから、学校行事をやることはよいのですが、「嫌でも参加しろ」、さらには「本心は嫌かもしれないが、表面的には喜んで参加するような格好をしろ」といった暴力を行使しない方が、望ましいのです。 ですから、そのように「思わせる」ことができず、他の生徒の力を借りて「やらせる」時点で、教育側の敗北だと心すべきでしょう。つまり、嫌だという生徒には「参加したくないのなら、その気持ちは尊重する。かといって、学校としてはいてもらわない訳にもいかないので、悪いけれど、消極的にいてくれたらいいよ」で丁度よいでしょう。その前に、いかにおもしろいか、を教育側から伝えられることがより望ましいのは言わずもがなです。
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