自分たちができることを
学校は夏休み、教員は校内外の研修に忙しいことと思う。
次のような感じで校内研修を進めようというところはないだろうか。「いい授業とは何か」をお題とし、模造紙や付箋紙を用いてそれぞれの意見を出し合うというスタイルである。 いつもにも増して「心穏やかならぬモード」に私があるためだろうか、乱暴な物言いをお許し願いたいのだが、もしこんな格好でやるだけならば、「止めよ、そんなん」。 意地悪な想像に過ぎるだろうか。「わかりやすい授業」「盛り上がりのある授業」「基礎学力が身につく授業」「よく参加できる授業」「学びあいのある授業」「笑いのある授業「メリハリのある授業」…こんな意見が付箋紙に書かれ、模造紙に貼られ、「これは似てるよね」と塊が作られ、「基礎・基本の徹底」といったラベリングがなされ、塊の間を適当に線で結んで、おしまい。金曜午後あたりの研修だと、これに引き続いて「お疲れさま~」「カンパーイ」という具合である。 こうしたスタイルは2つの点で大きな問題をはらんでいる。その一つは、授業にとって一番の当事者である教員が何をすれば/しなければ、そんな授業になるのかという主体性を欠きがちなことである。 「わかりやすい授業」のために教員は何をするのか、たとえば、「週に1冊は本を読んで雑学・教養を活かした授業を目指す」「市販プリントに留まらずお手製の教材を用意する」「45分あるいは50分の授業を二分して、途中に5分ほど休憩を入れる」「わかりやすい説明と思われる脚本を書く」「長々とした説明をやめる」と、自分たちでなしうる発想や行動に結びつけて、上の作業がなされるだろうか。従来もそれなりに「いい授業」を目指していながら、実現できていないからこその、このお題だとすれば、自分たちの何を変えなければならないか、に焦点を合わせて、まずはできそうなことを挙げて試みるべきだろう。 もう一つの問題は、既存の授業が置かれる条件をとりあえず前提にする場合、できることと難しいことの区分けや、できることの間の調整が不可欠という発想を欠きがちなことである。たとえば、「盛り上がりのある授業」を実現するには、この生徒数で果たして可能なのか、どこまで事前の準備ができるか、といった点を考えなければならない。「それは無理」「できないこともないけれど、そこまでエネルギーをかける余力がない」と判断されて「盛り上がりのない授業」になっているのが、実際でもあるだろうから。 つまり、①授業に対して自分たちにできそうなことは何か、あるいは、できるようになるために自分たちはいかに変わらなければならないか、②今の授業の環境を踏まえて、なしうる設計はどのようか、と考えられる研修にしなければならない。 にもかかわらず、もし、①自分たちが何ら変わるつもりはない、②授業を分解・構成しえない、ようなお喋りに終始するのであれば、まさに「やっつけ仕事」である。校内研修をやりましたと、回数を数えられるのに貢献するだけ(学校の自己評価が高まる?)で、秋からの授業もこれまで通り、何も変わらない。 こんな他人事のようなお題を立てるのを止めよう。これに替えて、頑張っているのになぜか上手くいかない、どうしてこうなってしまうのか、と困りや悩みを出し合うこと、それに応えられるかどうかを吟味すること、そんな深刻さや真剣さなくして、議論なんかできないと思うのだ。
by walk41
| 2013-08-07 07:02
| 学校教育のあれこれ
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