ザル法
長野県の私立学校で明らかになった、組織的と思われる教員免許法違反。
…学園によると▽中学・高校の教科免許しか持たない教員が小学校の担任に就き、専門とは違う教科の授業を担当▽小学校の教員免許しかないのに中学校で授業▽英語指導助手(AET)が単独で英語の授業を実施−−などのケースがあった。今年度1学期は全教員46人のうち11人の配置が不適正で、小学校22学級のうち5学級の担任が小学校免許を持っていなかった。 少なくとも過去2年間に3人の教員から「問題ではないか」と指摘されたが、改善しなかった。教員配置を担当する教頭は「制度をよく知らず、免許より教員の力量に応じた配置を考えてしまった。意図的に法律違反をしたわけではない」と釈明した。 県によると、同法に違反した教員の授業を受けた児童・生徒の履修実績は、学習指導要領に適合していることを校長が認めれば問題なく、卒業・進級した生徒についても実質的な影響はない。(毎日新聞、20130820) -------- 「免許より力量」と言われては、力量とは何なのかと問わざるを得ないし、さらに、無免許教員の授業を受けても実質的な問題はない、という段に至っては、じゃあなぜ免許をもっているかどうかを問題にするのか、とすら言える。かくも、教育職員免許法は、なあなあ状態のザル法である。 教室での「無免許運転」がときおり見られる一方、その実質的な影響がないようならば、教員免許は、こうした実際とより整合するように設計されることが合理的でもある。つまり、免許状を有することはあくまでも入り口であり、教員として育つかどうかは教職生活を通じてと考えるということだ。 もしその方向で考えるならば、教員の専門性を制度で担保することは大した意味を持たず、教員養成期間の長期化、教育実習期間の延長などは望ましいとは言えない。長く教育を受けたことをもって優れた教員の資質を持つことが説明できないからだ。 教員の育ち方として望ましいのは、「大学卒業程度」の学力や教養をもって入職したのち、学校内外でトレーニングを受けたり、ラーニング(学習)を促すこととなり、もって「実質的な」専門性を担保する方向をとる。この現実味はどうだろうか。 しかしながら、それでは正当性を主張できず、元に戻って、制度で「質保証」を図ろうとするが、これまた、とりわけ「開放制」制度という緩やかな縛りに過ぎないので、「教員免許を取るのは大したことない」と逆戻りする。う~む。 たとえば、京都教育大学ではしっかりと教員養成をしているから、それを大学評価・学位授与機構などに公証してもらい、「採用試験実質なし」にしてもらって、大学間の差別化を図ることがよいのだろうか。でも、これは教育委員会が嫌がるだろうなあ。また、こんな差別化を根拠づけるほどの指標を出せるかどうかも疑問だ。 あるいは、教職の高度化とは反対の方向、いわば大学を卒業していれば誰でもなれるんですよ、というくらいのハードルにしておいて、教員採用試験に大きく委ねるというのは。これまた、教育委員会の力量をそこまで見込めるのかどうか、不確かだろう。 制度に担保させようとしながら、それが実質化されず、かといって、制度を抜きには職業を正当化することもかなわず、と板挟みである。結局のところ、これを悩み続けるしか、手はないのかもしれない。
by walk41
| 2013-08-21 07:33
| 学校教育のあれこれ
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