学校教育の「見える化」ができない訳
クローズアップ現代、ムダの“見える化”で 医療の質を上げろ 20131002、を観た。興味深かった。
岐阜大学附属病院での取り組み。患者の術前評価、手術準備などをより丁寧にすることによって、予定時間を上回る手術や再手術を30%減らした。あるいは、医師と薬剤師の意思疎通を促し、もっとも有効な投薬方法を追求することで薬代の適正化を図った。こうした取り組みを通じて、患者の入院日数を平均19日から13日へと6日間短縮、医療費を6億円減らすことに成功したという。 専門家の推測では、全国8000カ所ほどの施設のうち、こうしたビッグデータ化と分析に取り組んでいるところはまだ500カ所程度らしいが、これらを通じて患者にあるいは病院スタッフの負担をより小さく、そして社会保障費上の負担も抑制するようになっていけばと思った。 そこで、いつものように学校教育について考えると、およそ上のようなモデルは適用できないなあと思わされる。その理由は以下の通り。 ①患者と違って、多くの児童・生徒は健康な状態にあり、彼らがどうなることが「望ましい姿」なのかが明らかでない。つまり、取りあえずのゴールがない。 ②病院が対応するのは原則的に、患者ひとりひとりにだが、学校ではクラスや学年ときに学校全体など、「子どもたち」と集合的に括られるために、焦点を持ち得ない。同じクラスでもいろいろな状況に児童・生徒はあり、「児童観」や「学級観」と束ねてしまうと、言っても言わなくてもよいような表現にならざるをえない。 ③仮に「望ましい姿」が明らかであり、また特定の児童・生徒に焦点化されるものであったとしても、課題への対応や吸収のありようは個によってさまざまであり、そのための期間や費用について想定することはまったく困難である。 だから、良くも悪くも、学校教育の費用をどれほど縮減すればどのような学校教育になるかを導くことはできず、量についても「勉強時間はより長く」、給食の残飯は「より少なく」が良い、という平凡な話を決して越えることはない。 かくしてこう思う。学校教育研究は、雨後の竹の子のように現れるまことしやかに語られる教育論を解剖し、その論理を批判することにこそ、存在意義があると。「こうやったら上手くいく」とか「こうして改善を図れ」などといった言説が、局在的に観ていたり、あるいは乱暴な指標を当てはめようとしていることを暴き、そう考えなくていいよとメッセージを送ることに意義がある。そして、最前線で上手くできずに悩む真面目な人たちに、自身の能力が低いから上手くできないのではないよと励ますことにある。この点で学校教育研究とは、学校教育言説の批判を眼目にする、と言える。
by walk41
| 2013-10-04 09:44
| 学校教育のあれこれ
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