学会にて聞いた話。現在は教育長で、民間企業で30年以上勤務され、民間人校長の経験も持つ方が、次のように仰ったのが印象的だった。
会社でエンジニアとしてあるいはマネジメントに携わる立場だった時は、「昨日と同じ今日であってはならない」をモットーにしていたが、学校に行くと「昨日と同じ今日でなければならない」と感じられたことに驚かされた、と。
言わずもがな、どちらがよいという話ではなく、それぞれの傾向があるのだということ、また、各々に得手と不得手があるのだろうと思わされる。前者は「流行」に秀でるが、後者は「不易」に強い。ヒトが数百年といった単位では基本的に変わらない点を考えれば、後者が良いが、人間が変化を求めることを考えれば、前者が望ましいことになる。
おそらく問題は、自分が馴染んでいる論理とは別の論理を踏まえてなお、これまでの論理に傾斜するかどうかを考えること、吟味、再考、省察に耐える思考体力を持ち得ているかどうかだ。「学校の常識は社会の非常識」と言われて押し黙ってしまうのではなく、「社会の常識は学校の非常識」や「社会の中にも様々な常識、非常識がある」と切り返すことのできる発想力が、異なる立場との対話を促すだろう。