「何となく」の恐さ
学校で授業を見せてもらう。その後は、「事後研究会」という集まりになる。
前回うかがった際にも意見申し上げたのだが、なぜ、従来の型での進行をするのかについて、再検討すべきではないだろうか。 最初に、授業者が「下手な授業を観ていただきまして…」と弁明とお礼を述べる。次に、観ていた人が、どちらかというと司会に当てられる格好で(子どもには、「自ら進んで」と促しておきながら)、発言する。「準備を含め、ご苦労さまでした」「あの点が良かったと思います」「どうして、あそこであんな風にたずねたのですか」と。そして、予定の終わりの時間が近づくと、司会が「力量が足りないのでまとめられないのですが、みなさんお疲れさまでした」で終わる。「何となく」やっている、おおよそこうした流れが一般的なように思うが、いかがだろうか。 余所者として、こうした場に臨むとひどく混乱する。「この人たちは一体、何をしているのだろう」、「何のために、ここに集っているのだろう」と。なぜそう思うのかって? だって、ここには議論したい「問い」がないもの。ただの、はなはだ失礼ながら、思いつきの域を出ないような、何となくの感想の出し合いで、深まることもましてや自身の授業が変わる契機もはらんでいないものだもの。何のためにこんな儀式をしているの? さっぱりわからん。 ただでも忙しいと嘆くのであれば、こんな時間を設けることはないだろう。しかも「研究会」なんて大仰な名前で、つくづく何を話しているのだろう。 第三者的には、こうしたことになってしまうのは、授業というものに対する思い込みや勘違いがそもそもあるのに、それを認めないために起こる不幸だと捉える。すなわち、授業は再現性がおよそ期待できないシロモノであるのに、それがあるかのように、つまり、追求していけば「良い授業(こうすれば上手くいく授業)」とか「真の授業」といったものが姿を現すはずだという、誤った信念に基づいているために、研究という様式に則るものの、それは無い物ねだりあるいはお門違いなために、形式を整えても中身が伴わず、いたずらに時間が過ぎる、と説明できるのではないだろうか。 重ねて言う。授業は教員だけでどうにかなるものではなく、そもそも教員自身が自分を制御できないことも多々あるものだ。だから、計画どおりに実施できたり、法則的な行為として捉えることが元々できない(だから、授業直前になっても、指導「案」のままである。いつになったら「案」が取れるのだろう)、ましてや、なかなか思うように動いてくれないたくさんの児童生徒もいる。「出たとこ勝負」の連続が、授業の実際だろう。 だから、「よい授業」を極めるために授業を研究する、という発想そのものが間違っているのである(言い悪いの問題ではない)。したがって、授業について議論するとは、授業を支える価値、論理、そして行為の関わり方を問い、そうでない繋がり方を試みるという作業に他ならない。そして、授業者の引き出しを増やす、裾野を広げることによって、豊かな授業像を生み出し、柔軟で多様な授業が可能になるような支援を行うこと、それが授業者とそれを観た他者のコミュニケーションの意義だろう。 なのに、先のような「なあなあ」の時間がもし、ひょっとして各地で流れているとするならば、このことを知った納税者は激しく怒ることだろう。そんなことに血税が使われているなんて納得できない、と。貴重な勤務時間を使って、こんな「何となく」の時間を過ごしているなんて。 それとも、これまでのようなやり方で、学校は説明責任を果たせると胸を張れるのだろうか。ぜひ議論したい、授業とはどんなことなのか、それはどんな意味で研究の対象となるのか、について。そして、従来のやり方では駄目だと分かれば、変えていきましょう。次の世代にこうしたルーチンを継承しないためにも。
by walk41
| 2013-11-01 09:06
| 授業のこと
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