学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

首長の学力

徳島県石井町の町長が、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果について、町立全小中学校の県内でのおおまかな順位を町議会で明らかにした問題で、自身のフェイスブックでも具体的な学校名を挙げて、全国平均との比較や成績への論評を書き込んでいたことがわかった。

フェイスブックでは冒頭に「公式発表」と記し、小学校5校、中学校2校の名前を挙げて、「全国平均よりはるかに上位」「前年より大幅に順位を落としております」などと記載。「日頃の努力の結果」「もう少しの頑張りが必要」などとも記した。 文部科学省の実施要領では首長や教委による学校別の結果公表を禁じているが、同町長は「学力向上を促すため、自分の判断で公表した。問題ないと考えている」としている。(2013年12月12日、 読売新聞、一部改変)
------------
静岡県の知事も似たような言動で物議を醸したが、どうしてこうも、首長の「学力」が低いのかと思う。去年と今年を比べても何の意味も無いということが、なぜわからないのか首をかしげるばかりだ。

1.小学校では6分の1、中学校では実に3分の1もの児童・生徒が入れ替わる。調査対象の16%~33%もの子どもが異なっているのである。当然、彼らの保護者の状況も一様ではない。学校の雰囲気も変わるというべきだろう。

2.全国平均では15%くらい、学校によっては30%ほどの教職員も毎年入れ替わる。教育側のメンバーが決して同じではないのだ。ベテランの比率、新採のあるなしなど、いずれも学校への影響は大きいだろう。さらに、学校の責任者である校長については、異動頻度はいっそう高く、同一校勤務は平均2.9年、つまり、34%ほどの校長が毎年入れ替わっている。中学校においてすら、入学した生徒の卒業までを見届けられるかどうか分からないような人的配置をしていながら、なぜ各学校の責任を問えるのだろうか。

3.もちろん、カリキュラムのありようにも大きく左右される。「特色ある学校づくり」といったことだけでなく、国、県、市町村あるいは各種団体による研究指定を受ければ、「子どもそっちのけ」でシャカリキになることが多い。「あんたら、こんなんでは研究発表に間に合わへんよ」と、なぜか子どもに檄を飛ばす教員もいるほどである。これが学力向上に功を奏するか否かはともかくも。

4.学校の改修や増改築などが行われることで、学校環境は大きく変わる。学校統廃合や立て替えはそう頻繁に起こらないものの、オープンスペースが生まれたり、図書館が整備されたり。この他、いろいろなボランティアの参加が伴ったり、あるいはなくなったりすることも考慮しなければならない。

つまるところ、学校名は去年と同じでも、今年と同じ学校とはおよそ言うことができない。生徒が違い、教職員が違い、学校の様子が違うのだから、これらを学校名が同じだからといって比較する訳にはいかないのである。

こんな簡単な論理が理解できない首長って、いったい。それとも、百も承知で難癖をつけているのだろうか。「ためにする」議論の実が少ないことは歴史的に明らかだろう。「公式発表」など、いったい何を望んでの所業だろうか。


[PR]
by walk41 | 2013-12-12 22:30 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
<< 「学級崩壊」という語り 考え続けることこそ >>



教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
nation
at 2017-10-17 12:45
好みの幅広さ
at 2017-10-15 12:43
スクールソーシャルワーカー
at 2017-10-14 10:59
「奏を功する」
at 2017-10-12 20:20
付いた力は自分ではわからない
at 2017-10-11 23:31
まずは良かった
at 2017-10-09 19:14
Fiasko/fiasco
at 2017-10-08 10:40
青か緑か
at 2017-10-06 09:39
丁寧な言葉遣い
at 2017-10-05 10:26
目標を実現することが即、教育..
at 2017-10-02 22:05
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧