ある中学校にうかがった。直接の眼目は、若手教員の授業を見せてもらい、検討するというものだが、それ以上に印象深かったのは、校長の姿勢、基調にあったように思う。
偶然、授業の科目と校長の持つ免許状科目とが同じだったこともあるだろうが、授業に50分間まるまる立ち会い、生徒の様子をのぞき込み、頻繁にメモを取られていた。事後の話し合いでも「一教員として参加します」と事前に仰っていたとおり、授業をした若い教員にたずね、また自身の経験も語り、「あそこは拙かったと思うんやけれど」「こうしたらもっと良かったかも」と、言葉を選びながら、授業者と参加者に発していたことが印象強い。
この授業を前後する校長室での話では、この中学校が置かれている状況-地域の皆さんの受け止め、保護者理解、そして生徒の様子-を、ご自身なりに判断して、「こんな授業が必要だと思うんです」と、訪問した我々に話してもらえたことを、心強く思った。
今回の経験を、まだ十分に消化できていないのだけれど、授業者に対して直接、間接に及ぼしているだろう校長のスタンスというべきものがあるかどうかが、個々の授業も少なからず方向づけるように思う。およそ科学的ではないだろうが、オーラともいうべき雰囲気、緊張感、大げさには必然性といったものが、学校の秩序をそれなりに形成しているように感じられたのだ。
「校長が変われば(替われば)学校が変わる」とはまま言われることだが、そうした消極的な話ではなくて、「今いる校長が学校を大きく方向づける」と積極的に言えるような校長がどれほどいるのだろうかと、改めて思わされたし、声の良く通る、教諭の目線で語れる、さらに学校を俯瞰して議論できる校長の意義を強く感じた日だった。
世の校長先生、教職員に頼もしく思ってもらえる存在でいるという自負はありますか。また、授業者の視点と学校管理職の視点の両方を持っている自信はいかにお持ちですか。私が見たのはごく一部に過ぎないけれど、だからこそ感じる「学校の一面」が校長によって語られるという点も、重ねて確かめてもらえれば嬉しいことです。