学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

「大学1回生プロブレム」

大学院生たちと話をしていて、タイトルのようなことに気づいた。

学校教育の議論では、小学校と中学校との接続が上手くいかず、中学校1年生に問題行動が多発するという「中1プロブレム」が指摘されるが、より深刻なのは、高校を終えて大学生になった直後ではないかと。

というのも、高校までは正解や正答があることが前提とされ、それにどれだけ近づいたかで評価されるという経験を繰り返すのに対して、大学に入ると、とりわけ人文・社会科学の領域では、「正解などない」「何が正しいかわからない」さらには「正しいというものを想定するのは、どのような思惟に基づくのだろうか」などと言われるのだから。両者のギャップにびっくりするのも当然だろう。

まったく優秀な元生徒ならば、こんなギャップも難なく飛び越えられるだろうが、「そこそこの」優秀さであれば、大学に入学後、驚き、失望し、自信を失うことにもなりかねない。「今まで信じてきた優秀さなど、大した話ではない」ということを受け止め、乗り越えていくのは難儀だろうからだ。

だから思う。小学校ではまだ難しいだろうが、中学校そして高校では、メタ的な思考のトレーニングをいっそう心がけてほしいと。人間そのものが時代や地域によって様々な価値観、論理、行動のさまを示しているのに、その人間と彼らが作り出す社会のあり方が一様であるはずがない、ということを。

そこでむしろ学びの眼目は、「今、こうした発想が大切と考えられているのはなぜか」「どうして、このような点が問題になっているのか」という物事を捉える際の相対感覚を獲得すること、そのために現在の「常識」を始めとした基本的な知識と技術を知ることが大切、と理解できることにある。もって、より幅広く見つめ、評価し、それらを元に行動できる自由な人間になりうる契機を得ること、それでこそ、大学教育に臨むことができるし、さらには世界に羽ばたける人間になれると言うべきだろう。

以上のような点で大学1回生は、ちょっと試練の時期である。大学入試で燃え尽きてしまうことなく、多少の余力を残して、元気よく大学に入学してきてほしい。

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by walk41 | 2013-12-17 19:53 | 学校教育のあれこれ | Comments(1)
Commented by ポッピーママ at 2013-12-20 04:56 x
おはようございます。
今日終業式。いろいろと考えます。
自分の本(プラスチックコンテナ3つ分)を職員室に持ち込み、提供してみました。結構はけましたけど、歴史や政治ものは残りました。
うちの教育大の卒業生の2割くらいしか採用試験に受からないそうで、若者たちは大変です。期限付き教員として現場経験を積んだ人をある程度の条件や推薦をもって優先するという仕組みがあるといいのにと思います。テスト点数は取れて採用されても、実際現場に入ってからうまくいかずに離職するケースも多いと聞いていますから。
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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