学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

「フィンランド信仰」者は何と言う

日本経済新聞Web版の海外リポート、「国際学力調査で日本不在、アジア3都市トップ固める」(2013年12月7日付 英エコノミスト誌)を読んだ。

OECDによるPISA調査について、同レポートは次のように始まる。

 「10年前の2003年調査は、数学的リテラシーを初めて重点調査対象とした。この時、各分野のランキング上位にはフィンランドの青十字旗がはためいていた。
 フィンランドの生徒たちは科学的リテラシーと読解力ではトップだった。数学的な基礎知識でも優れていた(2位)。教育改革論者は、フィンランドの教育システムを魅力的なものと考えた。このシステムは機会均等で子供に向上心を持たせる、ストレスも少ないものだ。 以降3年ごとに、世界中の15歳の生徒がPISAテストを受けてきた。2012年のPISAテストには、世界65カ国・都市の50万人が参加した。12月3日に発表されたその結果は、欧州の元チャンピオンにとって非常に屈辱的なものだった。
 フィンランドは前回の2009年調査に比べて、数学の平均点が22ポイント下がった。読解と科学でも(数学より下げ幅は少なかったが)それぞれ12ポイントと9ポイント下がった。フィンランドのニュースサイト「フィンベイ」は、「黄金時代は終わった」と嘆いた。」

ヘルシンキではその分析に躍起になっており、数学教師とカリキュラムが子どもたちにやる気を起こさせることができなかったのが原因とする者や、平等主義的な性質が潜在的な問題かもしれない、すなわち一部の優秀な生徒がないがしろにされているためでは、と指摘する者もいる、という。

片や優秀な成績を収めたアジア、とりわけ上海、香港、シンガポールなどについては、もはや早期からの詰め込み教育ではない、とする一方で、学校以外での勉強の負担が非常に大きく、塾や家庭教師による支えが功を奏していると同時に、生徒たちへの精神的負担の大きさも認められる、とも指摘する。

こうした記事を読むにつけ思わされる。「フィンランドは素晴らしい」と散々に語られて、つまり言説が消費されて、やがて消え去る(『競争やめたら学力世界一』朝日新聞社、2006、という、論理矛盾な本もあったなあ)。ブームは一時的である。そして、次の物語がやってくるということを。そして、ある結果を正当化するための論理(理論ではない!)が紡ぎ出されるものの、その妥当性が検証される前に次の事実が生じるということ、そのため、誰の説がもっともだったのか否かははっきりと分からず仕舞い、いっとき脚光を浴びた人が儲けておしまい、という展開を遂げることを。

同レポートには次の一文もある。「PISAテストの成績を見ても、学んだことをその後の人生でどれだけ生かせるかはわからない」。

学力は大切である、ただしその測り方は時代や地域に左右されるし、そもそも測ることができるという発想そのものも疑問の俎上に載せられるほど、あやふやなものである。それを踏まえて、問いかけること、そして議論すること、こうした作業がまずは教育関係者の学力を向上させることになるだろう。
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by walk41 | 2013-12-22 12:32 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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