朝日新聞の医療サイトapitalに、「これって効きますか?」が掲載されている。医師の大野智氏が連載しているものだ。その58回目(20140108)「相関関係のグラフにだまされないで」
http://apital.asahi.com/article/kiku/2014010800002.html では、イギリスの総合科学雑誌nature に載った論文、「科学的主張を解釈するための20のヒント」を紹介、その中でも次のヒントを興味深く聞いた。
「正確無比な測定法は存在しない」。これに大野氏は、あらゆる測定方法には誤差がつきまとう、また実際の差異よりも測定誤差の方が大きな可能性もありうる、とコメントしている。
面白い着眼だと思う。正しい測定方法が存在しないとは、必ず測定には誤差があるということ。さらに誤差が実際の差異よりも大きかったり、反対に実際の差異を相殺するように誤差が生じる可能性を考えるべきこと。
たとえば、2人の生徒のある分野や領域での差異はほとんどないにもかかわらず、違いが大きいと測定するかもしれず、さらには、A君とB君の間には差異があり、実はA君が優れているにもかかわらず、B君の方が優れていると測定する可能性もある、ということである。
これまで、どれほどの差異であるか測定できないとは述べてきたけれど、差異の中でも順位が逆転するかもしれないほどの測定誤差もあり得るということについては、よくわかっていなかった。この論理的余地があるのなら、「学力テスト」ランキングも順序を入れ替えて読んだ方が実際に近い可能性も残されることになる。
かくも測定するということの難しさについて、くどいくらいふまえること、その上でどんな論理を作りうるかを試みるといった丁寧な話ぶりが大切だと。「見ればわかる」とか「そんな風に見えた、思った」とか、ましてや「子どもが学んでいるのがわかる」などと「わかったようなこと」を決して言うことなかれ、と重ねて思わされる。