学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

入学式に教員が休むこと

 県西部の県立高校で50代の女性教諭が長男が通う別の高校の入学式に出席するため、担任を務める1年生の入学式を欠席していたことが分かった。新入生の保護者らは「今の教員は教え子より息子の入学式が大切なのか」と困惑している。
 県教育局によると、県内の県立高校では、ほかに男女3人の担任教諭が子息の入学式出席を理由に休暇届を提出し、勤務先の入学式を欠席した。県教育長は11日に開いた県立高校の校長会で「担任がいないことに気付いた新入生や保護者から心配、不安の声が上がった」と、この事実を報告した上で「生徒が安心して高校生活をスタートできる体制づくりと心配りに努めてほしい」と異例の“注意”を促した。
 関係者によると、入学式の担任紹介の中で校長が女性教諭の欠席理由を説明。女性教諭は「入学式という大切な日に担任として皆さんに会うことができないことをおわびします」という文章を事前に作成し、当日、別の教諭が生徒らに配ったという。
 来賓として入学式に出席した県議(刷新の会)は「担任の自覚、教師の倫理観が欠如している。欠席理由を聞いた新入生たちの気持ちを考えないのか。校長の管理責任も問われる」と憤慨。県教育局は「教員としての優先順位を考え行動するよう指導する」としている。(埼玉新聞、20140411、一部改変)
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さて、この問題をどう考えればいいのか。より責任のある立場、例えば校長が入学式を欠席、とは行かないだろうけれど、あとはケースバイケースにならざるを得ないと思う。公僕なのだから勤務せよ、と言っても、親族の不幸があった時もダメなのか、自分が病気でもおして学校に来いといっているのか、無茶いうたらあかんで、ということもあるだろう。

保護者の中には、もちろん教員もいる。我が子の入学を祝いたいという気持ちは当然で、有給休暇をそれに遣って何がいけないとも言えるだろう。ましてや卒業式と違って入学式、生徒にはこれからたっぷりと会える。ちなみに、高校の学級担任の位置づけは、たとえば小学校のそれと比べて著しく「軽い」。生徒から問題視されないならば、大したことではないと言っていい。「こんな日に担任がいないなんて」と保護者が目くじらを立てるなら、学校での指導は全面お任せする覚悟です、決して「モンスター」然とすることはありませんと、宣誓書でも書いてほしいよね、と学校としては嫌みも言いたくなる(ちなみに、義務教育後の高校は生徒が主体、保護者がとやかく言う話ではない、との立論も可能だろう)。

案の定、脱社畜のススメを主張する立場からは、プライベートを大切にする大人の姿を生徒に見せることは望ましいとの声が上がっている。それへのコメントには、そもそも休暇届けの理由を公にすることの問題、あるいは任用権者の知事の代理人でもない県議が発言できる立場にはないとの指摘もある。もっともかと思う。

休んだ教員にたずねたいことは、行った入学式で、子どもの担任が自分の子どもの入学式のために休んでいると知った時に、「そういう選択もあるよね」と思えるかどうかだろう。同様に、他の保護者についても、たとえば、社屋完成式に来てくれなかった取引先があっても「仕方ないよね」と思えるならば、今回のことは何の問題もない。

ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州では2015年に向けて新しい学習指導要領を策定中、議論が続けられているが、そこで州政府が強調している一つは、多様な価値観の「受容と寛容(Akzeptanz und Toleranz)」だ。文化、習慣、行動、多様なあり方が認められるべきと、民主主義社会を考えるのならば、大らかさと忍耐は不可欠になるという「大人の発想」を見る思いがする。この点で、先の県議や教育委員会関係者はまだまだ「お子ちゃま」である。
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by walk41 | 2014-04-13 09:06 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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