TEDにKen Robinson卿が登壇。How School kills creativity で人気を博して4年後、Bring on the learning revolution と題して 学校の改善ではなく革命をと語る。
個人的には、ユーモラスな話しぶりは楽しかったものの、主張としてはイマイチだったかな。その上で、参考になるなあと思われた表現は、"But we have to change from the industrial model to an agricultural model"(しかし、私たちは工業的モデルから農業的モデルに変えていかなければならない)というところ。
工業的な学校教育のモデルとは、予め決められたコースにしたがって、資源と時間を管理していくことだろう。そこでは、変更を想定しないルールが強調され、文書主義、没人格的傾向が助長される。しかし、対象となる子どもはまさに生き物で、それぞれの考えや都合があるから、働きかけようとする教育側の思いが貫徹されるべくもない。そもそも、教育側とて一枚岩ではなく、同じ人物であってすら、日によって趣は異なるのである。
また、教員や子どもの思惑を越えた事情も十分に起こりうる。学校教育はまったく開放的な仕掛けとして設計されており、家庭、地域との連携、学校開放など、学校外との遮断を想定していないからだ。こんな環境にあって、学校内での思惑がどれほど現実化すると考えられるだろう。ありえないようなことを想定して、授業や生徒指導を議論するから、「~すれば、~になるだろう」と、言っている本人すら信じていないような浮き世離れした言葉遊びが跋扈することになる。そして嘘つきにもなる。
夏風を受けていっせいに揺れる稲をイメージする(少なくない人には、これが「自然」を想起させる風景だそう)ように、農業そのものも計画的、一律的ではあるけれど、工場内で完結する工業よりは、いくぶん曖昧で状況適合的だろう。学校教育をせめて農業的にとのメッセージは、聴くに値すると思う。