教員免許更新講習が始まって、何年が経ったことだろうか。おそらく、政治家も文部科学省も、教育委員会も学校もそして教員も止めることを望んでいるだろうに、なぜかなくならない不思議な制度である。しかしながら、個人的にはたまには大学に来てもらって、毛色の違う話に触れてもらうのも一興だろうと思い、講習を担当している。
今年あたりから、知り合いを受講者名簿に見つけるようになった。彼らは、五十代半ば近く、四十代半ば近く、三十代半ば近くの教員だ。その中に、大学時代とてもお世話になった人がいた。
もう30年以上も前、大学に入学間もない頃から、何かと気にかけてもらい、大いに助けてもらった人である。そのお陰で、大学生活での良い「離陸」ができた、恩人でもある。卒業してからはほとんど会うことがなく、私が京都に帰ってからある会で少し話すことがあったが、それは大学以来、四半世紀以上が経ってからだった。
講習での私の担当は、150分間。終わって片付けをしていたら、その人がやってきて、「おもしろかった」と一言。「他の大学でも受講して、それなりに工夫してはっても、時々はくらっと眠気に襲われたけれど、まったくそんなことがなかったわ。とてもおもしろかった」と話してくれた。
この言葉に接して、とても嬉しく思った。元気なだけで論理はおぼつかず、他者の気持ちも忖度できず、乱暴だった当時の自分(いまでも多分にそうである)に、大学にはこんな先輩がいるんやと思わせてくれたその人から、褒め言葉をもらったことに対して。これで少しは恩返しができたかな、と感じたのだ。