学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

甚だしい認識錯誤

山本敏郎ほか『新しい時代の生活指導』(有斐閣アルマ、2014)を読みかけている。

この中に「学校づくりと生活指導」とあるが、その冒頭に「今子どもたちは、学校の管理・経営業務にあたかもそれが当たり前のように従事している。子どもたちが学校の管理・経営業務に携わることに意味はあるのだろうか」と記されていて、目が点になってしまった。何じゃ、こりゃ!?

本文を見ると、さらにびっくりすることが書かれている。1989年の学習指導要領によって、児童会や生徒会が子どもたちの自治組織であることが決定的に否定されたと述べたあと、「(児童会の)各種委員会は児童会の委員会というよりも、顧問教師の指揮・監督・統制を通じて学校の管理・経営に協力する委員会になっている。学校重層構造論と接続すると、作業層のいわば『下請層』として、顧問教師の指揮・命令のもと、学校経営に一方的に協力させられているといってよいだろう。」

こういう文章を見ると,学校教育は正確で厳密な客観的な捉え方よりも、当事者の願望や希望といった主観的な捉え方が優位しやすいこと、だからこそ、「どうしたらいいのか」に遙かに先立って「どう捉えたらいいのか」が丁寧に議論されるべきと、改めて強く思わされる。

全国3万校ほどの小・中学校、あるいは高校と特別支援学校を加えれば3万5千校ほどの初等・中等学校のすべてを知ることはおよそできないが、それでも、児童会や生徒会が、学校の管理・経営業務に協力的といった事実がどれほど認められるのか、まったく疑問だ。ここで言う「学校の管理・経営業務」が何を指すのかにもよるけれど、学校経営を看板にする私の立場から、子どもに関わる学校での仕事を挙げれば、「学級崩壊」や怠学がなく、落ち着いて授業が進められること、「いじめ」や暴力、あるいは不登校といった学校の機能を脅かす行為のないこと、が一番に来る。

これらが、児童会・生徒会の協力のもと、うまく進められる、運ばれるのであれば、学校にとって何と嬉しいことだろう。しかしながら、そうなっていないからこその、生活指導であり生徒指導なのだ。必ずしもそうなっていないから、むしろそうでない状態が一般的だからこそ、生徒指導加配、少人数加配、スクールカウンセラーの派遣といった行政的支援がなされ、また、地域ボランティアの活用、縦割り班の編制と、学校経営上の方略も見られるのである。そもそも、学校に通っている子どもと教職員との間に、法的・行政的根拠にもとづく指揮・命令・統制といった関係が成り立つはずもない。

だからこそ、同書にも、授業中に立ち歩く、教師の指示に従わないといった「学級崩壊」、「いじめ」や「暴力行為」が指摘され、問題視されている。このことは、子どもが学校の業務に従事している姿からほど遠いことを示すものだろう。一冊の本として整合性がまったく欠けていることを、読者はどう理解すればよいのだろうか。

まさしくそのように、教職員とくに教員は、宿題をやってこない、時間を守らない、つまらないことでケンカをする、学校の器物を損壊しかねない子ども達に、大いに手を焼いている。「顧問教師の指揮・命令のもと、学校経営に一方的に協力させられている」など、虚妄に過ぎない。にもかかわらず、つまり同書でも「生活者としての子ども」に迫ると謳いながら、かくも浮き世離れした言葉が、なぜ活字化されるのか。大きな謎だ。

学校教育の研究とは、その実際に迫ろうとすることだけにあるのではない。研究の名の下にどのようなことが行われているのか、それは何をいかに見ることで(あるいは見ないことで)導かれているのか、を明らかにすること、こうしたメタ研究も、学校教育研究の重要な柱となる所以である。
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by walk41 | 2014-12-18 08:59 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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