若手教員を中心に、話をする機会があった。学校教育はいかにマネジメントできるのか、というお題だ。
マネジメントを進めるには、現状を適切に把握できなければならないが、それは観察者効果のほか、見る側の教育主義ともいう眼差しの歪みが避けられないから、「だいたい、こんな感じ」とは言えても、厳密な話にはおよそならない、その一例として、授業中にペン回しをする生徒を教員は見誤るでしょう、と説明したところ、次のような、まだ現役大学生の発言があった。
自分が生徒だった頃に、ペン回し禁止令が出たことがあり、自分はペン回しがいけないことなんだと思っていたけれど、今日の話を聞いて、そうではないんだと知ったし、視野を広げて物事を考えなければならない、と思った。
学校がした判断をその通りに受け取ってしまう「素直な子」が教員になって、教職が再生産されるのだなあと感心したこともさることながら、驚かされたなあ、学校がペン回し禁止令を何のデータ根拠なしに出したということに対して。
授業に集中するあまりペン回しをしてしまう場合が少なくないと報告されているのに、①授業中のペン回しはいけないこと、という価値観や眼差しが支配的なために、②ペン回しは集中力を欠いている証拠、ペン回しは教員に失礼、といった論理が作られ、③ペン回しを禁止するという行為が生じる。だから、③の行為を修正するには、②の立論を改める必要があり、そのためには①の価値観や眼差しを変更する必要がある、という説明の好例になる。
それにしても恐ろしや、ペン回し禁止令。かくも、「大した根拠もないのに、何となく決められていること、やっていること」が、学校にはたくさんあるのだろうな。