電車で大学生と思しき女の子、二人が立っている。二人ともスマートフォンと懸命にお見合い中だ。見る人が見れば、「せっかく二人でいるのに、画面ばかり見て、コミュニケーションが成り立っていない、現代の嘆かわしい風潮だ」と宣うことだろう。
ところが、彼女たちの目の前には座席が一人分空いている。相手のことが眼中にないのなら、さっさと座るだろうに、二人とも立ったままなのだ。自分だけが座ったら悪いなという、相手に対する気遣い、つまりあなたのことを考えているよとメッセージを送りあっている。
スマートフォンをいじりながら、相手への配慮も忘れない。彼らはむしろ高度なコミュニケーション能力を持っていると評すべきではないだろうか。