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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

「避けること」の何が問題なのか

小学校に勤める人から聞いた。ある若手教員は、低学年の子どもたちにこう叫んだそうだ。「どんな理由があっても、仲間はずれにすることは決して許しません」と。

伝聞の限りでは、ある児童がどうも鼻水を垂らしたまま、近づいてくるために、周りが嫌がって避けようとするらしい。これって、きわめて素直な反応じゃないかしら。

当の児童からすれば、みんなが逃げていくのだからいじめに遭っているとも思わなくないだろうけれど、だったら、その様相を何とかしてよと思うのは人情だろう。自分の服に鼻水がついても構わないというウルトラ大らかな子どもならば別格だけれど、その子どもも他のみんなからきっと避けられるよ。

どうも、いじめという言葉でいろいろな事象を括ってしまうことに問題がありそうだ。自分が小学生の時もあったいじめ、いじめをした側も、された側も両方を経験したなあ。

昔を思い出しながら、いじめた理由を考えると、動作が遅い、牛乳瓶の底のような眼鏡を掛けている、(いつも同じ服だったように、衛生的でなかったのだろう)変な臭いがする、そして、聴覚障碍で発声が違う、転校生で珍しい苗字、すぐにキレて暴れる、といった、「うまく説明できないけど、みんなとちょっと変わっている」ことが最大公約数になるように思う。

ひるがえって、たとえば障碍を理由に差別されることはもちろん問題だろう。車いすでも乗れるようなバスや電車のバリアフリーが広がり、肢体不自由な方が公共交通にアクセスできるようになることはとても大切だ。講演会に手話通訳者がついたり、目の不自由な人に触れる展示物がある博物館も魅力的だ。障碍者の雇用率を数値目標づけることもいいと思う。

あるいは、電車の中で奇声を上げたり、なれなれしく近寄って来る人を不思議に、さらには嫌にあるいは恐怖を感じることは、差別とは言えないだろう。もちろん、クラスメイトとはいえ、鼻水がつくかのような格好で迫られて、そこから離れることも同様である。

変わっている=異者を忌避するのは、安全に生きようとする人間の一つの判断である。何を好んで嫌悪する場に身を置きたがるだろうか。その際、①避けられる当人が、避けられる理由を理解できないとき、②避けられる理由が、当人には変えようのないとき、③避けるという消極的な排除に留まらず、攻撃するという積極的な排除に至るとき、は、問題ある排除になるように思う。

だから、排除は条件つきで認められる/認められないと議論を整理すべきだろう。よって、「どんな理由があれ」なんて言う教育者は、ものを考えていないし、こうした押しつけという暴力を行使しているに過ぎない、あんぽんたんである。

また考えてみたい。
by walk41 | 2016-02-22 16:01 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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