新年度がスタートして、授業も進んでいる。手前味噌だが、いずれもまあまあいい雰囲気じゃないかな。
そんなある日、一人の学生がやって来た。尋ねると今日初めてこの授業に来たのだと。やむを得ない理由もありうるから事情を聞くも、致し方ないとはいえないものだ。よしんばそうであったとしても、この間、授業者に連絡を取ることはできるし、最低の最低限、クラスメイトに伝言はできるだろう。それらはいずれもなし、これまで配ったレジュメのコピーすら携えていない。そんな格好でやってきて、グループワークをしているからどこに座ってよいか、わからないのだ。どこに座ればよいですか、と。
もうすでに複数回、授業は進んでいるし、何よりこの雰囲気についていけるはずもない、そもそも、逃がした分が君にとって勿体ない、と話すが、なかなか引き下がらない。◯回までは休んでも単位を取れるじゃないか、と。
あのさあ、大学って建前かも知れないけれど、来たくて来るところだよね。嫌なら来なくていいから。その期待に応えるべく授業者は準備をしてその時間に臨んでいるの。お茶の間でテレビを見るように、気が向いたら見ようか、というものとちゃうで。ましてや、国立大学法人の学生、皆さんから集めた税金が授業にもたくさん投じられてる。そんな声を荒げて、食ってかかる態度を教室で示している自分を恥ずかしいと思わないのかな。
教員を含めて大学人はある意味、特権階級である。自由な時間を与えられて、自分の進路を築ける、歩める可能性をもらっている。その地位にふさわしく振舞うことは義務でもあるやん。君たちは消費者ではないよ。一緒に大学の価値を作っていくメンバーでもあるのだから、互いに頑張ろうよ。納税者に顔向けができるように。