こんな授業研究をやりませんか
少し前に書いた論文だけれど、研修会などで紹介すると、皆さんから反応があるので、そのポイントを紹介する。たとえば、こんな感じで授業研究をしてはいかが、と提案したい。
榊原禎宏・清水久莉子「授業を観るとはどういうことか-ドイツにおける『エビデンスにもとづく授業診断とその開発方法』の提案」(2014) http://ir.kyokyo-u.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/8107/1/S007v125p89-102_sakakibara.pdf その抄録は次のようだ。-日本各地で行われている公開授業や研究授業は,師範(模範)として観る側が学ぶ上では授業者と参観者の条件の違いを無視できず,かといって,その授業の改善を図るためには見る側が授業者やクラスのことをあまり知らないという,中途半端な位置を占めている。何のための研究授業なのか,その意義や課題について論理的整理がなされていないのである。こうした現状認識から,本論文では授業改善を図るために同僚間で授業を観察すると同時に,アンケートデータと合わせて授業者へのフィードバックを重視した,ドイツで提案されている「エビデンスにもとづく授業診断とその開発方法」を取り上げた。そこでは,授業の主観性と客観性,授業を観ることと観られることに関する斬新な発想と試みを見ることができる。今後,この取り組みの具体を追う中で,教員が変わり授業が変わる「仕掛け」について,理解を深めたい。- かなり約めると、この授業研究は次のように進める。 ①授業について込み入った話ができるパートナー(タンデム)を校内で決める。 ②この二人だけで、それぞれの問題意識、課題について共通了解をはかる。 ③この二人がそれぞれの授業を観に行く。観察者は一人だけなので、授業への干渉は最小限に抑えられる。また、生徒にも同僚の訪問のあることは予め知らされると同時に、授業分析のためのアンケートに授業者、観察者、生徒が答える。 ④授業後、観察者の見たこと、授業者が気づいたことを交わすとともに、授業者、観察者、生徒の三者の評価を比べ、そのばらつきと平均に注目する。そこでは、授業観察者の診断上の特徴に気づくことで、適切な授業評価にも繋がることが重視されている。 ⑤授業観察とその評価、そしてフィードバックは、複数回行いうる。その前回との比較を通じて、授業観察者、授業者、そして生徒の変容ぶりを知ることもできる。 これら裏返すと、次のことが浮き上がる。つまり、これらを避けようとするのだ。 ①授業のありようは、個々の教員の特徴と優れてリンクしているから、授業者の人となりに関わる授業を変えるには、「みんなで話し合う」のは意味がない。 ②「みんなでできる」テーマを扱ってもあまりに最大公約数的で、個々の教員にとっては隔靴掻痒の感を脱しない。 ③「みんなでやる」ことに高い順位を与えるから、日程調整が難しく、研究主任が苦労する。 ④授業観察者の診断能力を疑わないから、いつまでも「そう観た」「そう思った」と言いたい放題が続く。授業を受けた生徒の見方が採用されることも少なく、「子ども不在」のお喋りが続く。授業後の事後協議会(事後研究会)の様を納税者が知ったら、怒り心頭なこと、間違いなしである。 ⑤イベントの公開授業が終わったら、たいていは元の木阿弥である。授業者の診断能力の向上が目指されることはなく、また、授業者の改善を確かめることもできない。まったく悲惨な話である。 発想として、論理として、そして具体的に、授業者と授業観察者が変わるように仕掛けを設計すること、これらの点でより知的であること、その一事例としてのドイツの様子。例えばという話で、こんな授業研究をやってみようとは思われませんか。
by walk41
| 2016-08-12 09:43
| 学校教育のあれこれ
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