教育者の傲慢さ
教育というものは元来そうなのだろう。何って? それは基本的に暴力的なものだということ。
「授業改善」に向けた取組について説明を受ける。僕が気にしすぎなのだろうか、嫌な言葉が目に入ってくる。それは大きく二種類だ。 その一、「~させる」の濫用。「声に出させる」「言わせる」「慣れさせる」といった言い方。こんなのもある。「(生徒が黙っている状態を)許している」(だから、そうさせてはならない、という物言い)。 こんなことを他の業界で言ってごらん、えらいことになるよ。「ようこそ、お越し下さいました」「お気に召しましたか」「ご利用いただき、ありがとうございます」と言う世界と比べてみよう。こう書くと、「生徒はお客様じゃない」と反論されるだろうが、じゃあ伺おう。学校にとって児童・生徒とは何者なのか。それについて考えないで、おそらく「何となく」、「~させる」ものと考え、口をついてその言葉が出てきて、そして行為する。これは知的な退廃ではないだろうか。 その二、「反応がない」「伝えようとしない」といった言い方。そこには、自分(たち)の見立てが適切かどうかの疑いが微塵も感じられない。 医療の世界をイメージしてみよう。患者さんの様子を見て「反応がない」のはなぜかと、医療関係者ならばきっと考えるだろう。そのように見る自分が誤っている、反応しているのに自分が見落としているのではないか、と。これに対して、(学校)教育の世界は、過程も結果もほとんど見えないから、「言いたい放題」がいつでも跋扈しうる。教員という肩書きを得ているだけで、自分が見たこと、感じたことが、あたかも真実かのように思い込んでしまう。「先生」ということで過信して、自分を疑う能力が低くなっているのかもしれない。 とくに、昨今の教育思潮は児童・生徒の内面に根ざす価値観に重きが置かれているから、その過程と結果の見えにくさは一層だ。なのに、「何となく」自分が見た、感じたことを相対化せずに、子どもの様子を判断する。自分(たち)の診断能力のいかんを問うことなく。 ①別の人格をもった他者の了解を取り付けることなく強いること、②しかも、その根拠がはなはだ薄弱であるにもかかわらず、自分の「常識」にまま基づいていること、これらはまったく暴力的である。大人同士の関係ならばおよそ許されないことだろう。 だから何度でも私は教員に言う。「子ども相手の仕事をしていないか」と。自身を疑え、他者に「~させる」などと傲慢なことを、(極力)考えるな、と。大学教育に直接に、小中学校教育に間接に関わる自分にも当てはまりうることとして。
by walk41
| 2016-09-01 09:53
| 学校教育のあれこれ
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