学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

どうなる義務教育

教育機会確保法が成立した。不登校の児童・生徒を支援するということがねらいと謳われる一方、この当事者の中には、多様な学びを保障するものではなく、かえって不登校の子どもを追い詰めるとの見方もある。けれど、「不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること」を述べる同法(第3条)は、「学校に行かなくても済まされる」ことを明言した点で、これまでの義務教育に関する理解を変えるものだと私は思う。

学校教育法、第16条では、「保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」は、保護者に対してその子どもに普通教育を受けさせることを述べる。

そして、同第17条では、「保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間においてこれらの課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする」と、9年間の学校教育によってこれを履行することを示している。「教育を受けさせる」とは学校に行くことと捉えられているのだ。

さらに、同法の第144条には「第十七条第一項又は第二項の義務の履行の督促を受け、なお履行しない者は、十万円以下の罰金に処する」と、保護者に対する罰則規定も設けられている。この条項に忠実であるなら、不登校という事態は、保護者の義務の不履行として罰則の対象となるだろう。

私が間違っているのだろうか、今回の法律の制定は、学校教育法の義務教育に関する規定と齟齬を生じていると思うのだけれど。義務教育として学校教育を定める一方、「多様な学習活動」を支援というのは、学校に行かせなかった場合の保護者への罰則は事実上なくなったということだろうか。

いずれにせよ、就学が通学を必ずしも意味するわけではない、と宣言することになった今回の法律は、義務教育とはどういうことかを基本的に問い直すものだ。学校に行くことが当たり前ではないという、学校飽和時代の次の季節を今や迎えたということだろう。
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by walk41 | 2016-12-18 16:07 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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