それなりの理由があってのことだけれど、感情的に消耗することは、あまり賢明と思われない。特に怒りについてはそうだ。怒っている最中はもとより、その後も悲しみを含む感情に圧倒される場合が多いから、感情という資源のいわば無駄遣いになる。このことにしっかり気づくのに、何十年とかかってしまった。まさにもったいなく思う。
見る、聞く、考えるといった認知と同じように、喜び、悲しみ、怒りといった感情も人間が持つ資源である。だとすると、例えば1日に使うことのできる感情には限りがあり、それらをより効果的に使うことがセルフマネジメントとも言えるだろう。
世にはアンガーマネジメントという言葉もあり、いたずらに怒ることの損失が強調されるように、感情が後々に尾を引くことにいっそう注目すれば、相当なことがない限り、怒らない方が賢いとわかるべきだ。心穏やかに生きることは必ずしも容易ではないが、そうすることの「得」をより踏まえるべきだなとも思わされる。