学校におけるいじめの防止、対応について議論が喧しい。昨年末の会議では、文部科学省の官僚が「部活、教育相談よりも、いじめ対応を最優先してほしい」旨の発言をしたとも聞く。
いじめに限らないが、問題が起こるたびに、しっかりやれ、と檄を飛ばすのは、およそ科学的ではない。従来は手薄だったところに手を掛けなければならない、というのであれば、主に人的資源を新たに投入することは当然だからだ。部活、教育相談をなおざりにしていい、という意味ではなく、部活、教育相談も、そしていじめ問題にも対応せよというのである。
そんなマルチタスクをこなせる人は多くないだろう。世の中で働いている人の60人に1人くらいが教員、という社会的水準に適った話をしてもらわなければ、絵に描いた餅にすぎない。スーパーマンは教職になかなかいないのだ。
ならば、いじめ問題をもっぱら担当するスタッフを「チーム学校」の一員として揃えればいい。授業を持たず、学級担任でもなく、部活も担当せず、進路指導も担わない新たな職員を全校に配置し、朝から夕方まで「いじめはないか」と学校内外を歩きまわるのだ。児童・生徒から「いじめられたと感じた」と訴えがあれば、即、事実を確かめ、校長ほか執行部に連絡をとって対応する。一校に一人配置として、小学校、中学校、高校ほか、初等・中等教育学校の学校数分、およそ36000人の雇用も生み出せる。
常勤職員として設計すれば、時給1500円で、一人あたり年に500万円、合わせて1800億円の予算を計上する。「どんな小さないじめも見逃さない」のであれば、このコストは高いとは言えないだろう。
こんな青写真なしに、もし議論がなされているのならば、今いる教員の多忙をより強めることになる。これは、現有資源のいたずらな消耗であり、事態をより悪化させる。こんな方向をマクロな経営を担当する者が示してよいのだろうか。課題が増えればマンパワーがより必要、現有スタッフがサボっていると認知しているのでなければ、この方向しか残らない。それとも、何かいいアイディアがあるだろうか。