かくも裁量の多い業務
鳥取県湯梨浜町の町立小学校で昨年7月、6年生の女子児童(12)が放課後の水泳の課外授業の際、プールに飛び込み頸髄損傷の大けがをした事故で、指導中の男性教諭が、飛び込みが苦手な他の児童を「腹打ちの三銃士」などと呼んでいたことが4日、分かった。町教委によると、男性教諭は飛び込んだ時に水面で腹部を打つ児童4人に対して「腹打ちクイーン」「腹打ちのキング」とも発言していた。事故後、女子児童の保護者からの指摘で発覚した。町教委は2月、課外授業に参加した児童など計95人を対象にアンケートを実施し、33人が発言を聞いたと回答。「言われた人が泣いていた」「周りにいた先生も注意していなかった」などの記述もあった。(産経WEST、20170304)
もう影を潜めただろうか、こういう主張は。曰く「文部科学省ー都道府県教育委員会ー市町村教育委員会ー校長というルートで強い教育意思が上意下達され、教師の仕事はより細かくコントロールされる。教師の「教育の自由」が奪われていく。」 ところが事実はこの主張とは異なり、どれだけコントロールしようとしても、児童・生徒と直接に関わる最前線、教員の個業的な業務遂行の領域に影響を及ぼすことは難しい。子どもたちやその他の状況に応じて柔軟に、しかも瞬時の意思決定を通じて行われるのが、教員の労働のコアだから、「~あるべき」という主義主張とは別の話として、それぞれにある程度は委ねられるのが、教育という仕事上、合理的だからである。先の論者が言うような「国家の教育権」が隅々まで貫徹するのなら、上のような事例が起こるはずもない。しかし、実はそうではないというのが現実だろう。 だからこそ、委ねられる個々の教員には、認知的・情緒的な自身のバイアスを承知の上、高いセルフマネジメント上の能力が求められる。「教育の自由」とは教員が自分が思う何をやっても構わないということでは全くない。そうではなく、選びうるより多くの選択肢の中から、短い時間で判断、行動できる(行動しないという行動を含めて)態度と力量を、児童・生徒の学習のために活かしてこそ、自由を行使することになる。その自由裁量がなければ、子どもの利益につながりにくいという理念を現実のものとする努力が教員に求められると言うべきだろう。 ところがきわめて残念ながら、この裁量権が濫用され、教員による「悪ふざけ」の様相を呈する場合が今回のケースである。小学生ではまだ教員に正面切って異論を唱えることが難しいのだろう、その分だけ教員の「悪乗り」が増長されうる。 これは、初等・中等教育だけのことではない。「学問の自由」に守られた大きな裁量権を有する大学教員についてはなおいっそうだ。いい加減な授業をしていないか、不確かな理由で休講にしていないか、レジュメもないような準備不十分ではないか、と自問すべきだろう。
by walk41
| 2017-03-08 22:24
| 学校教育のあれこれ
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Comments(2)
Commented
at 2017-03-09 06:24
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at 2017-03-09 21:59
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