中学校での給食が完全実施されていない市で、市長がこれを実現すると議会で打ち出したそうだ。当該の教育委員会のお喋りでは、学校は大変やなあと頭を抱えているらしい。
うかがうと、落ち着いている学校ならばいいのだけれど、そうでない学校の場合、給食の時間が近づく4時間目あたり、廊下付近に運び込まれる食缶をねらう悪童たちが、唐揚げやデザートのプリンなどをかっさらっていくため、教員たちは早くも食缶を教室に運び込み、奪われないように自衛しなければならないのだという。もちろん、昼食時の配膳や片付けなどでも困難が予想されるのだろう。
なるほど、給食があるとこんな事態も想定しないといけないのか、と思っていたら、違う角度からのエピソードも聞いた。それは、給食がないことによる「いじめ」である。
中学時代、ある女子生徒のお弁当は、保温機能のついたもので、しばしばカレーを持参していたそうだ。お昼時、温かなカレーの香りが教室中に流れたのだろう、このことを面白くないと思っていたクラスメイトの多くが、彼女が転校生だったということもあり、カレーに引っかけて「何か臭わへん」「加齢臭ちゃう」と言い始めた。彼女は声すら掛けてもらえなかった状況だったので、いじめではなくいじられているという感覚だったのではないかと、当時同じ教室にいた人は回想する。なぜかって、自分のカレーを指して、「これ美味しいで」と返していたそうだから。ちなみに、昼食時間、その場にいた学級担任教員は、これを助長こそしなかったものの、何も言わなかったとのこと。
ああ、子どもに限らないが、人間が集まるところ、必ずといってよいほど、葛藤、衝突、権力争い、傷つけ合いが起こる。学校も本当に大変である。