教育内容の部分と全体
アクティブ・ラーニングに関わる話をうかがう。パフォーマンス課題について、さまざまな知識やスキルを総合して臨むような複雑な課題、と聴いた。
この分野の素人なので、勘違いしているのかもしれないけれど、これは部分と全体、あるいは具体と抽象に関するテーマなのかなと思う。 例として紹介されていた中学校社会科の課題:「時は1900年。あなたは明治時代の新聞社の社員たちであり、社会が大きく変化してきた明治維新を記念する社説を書くことになりました。社説は、同授業を生きる人々(政治家、産業界の人々、文化人、一般の人々)に向けた新聞社からのメッセージです。話し合いの内容や今までの学習を振り返り、今後の改革のあり方について重要だと思うことを提案してください。」 これに臨むには、1900年がどんな時代だったか、たとえば日清戦争と日露戦争の間、義務教育就学率が100%に近づきつつあったこと、社会主義協会が設立。国際的には、パリ万博、義和団の乱などを踏まえて論じなければならない。その時点から、明治維新について述べるのである。相当に難しいと思う。 ところで、複雑な問題に臨むには、個別の事実を知り、かつそれらをつなぎ合わせる筋道が必要だ。そこには解釈が不可欠で、そこに捉えようとする人による違いが生じる。現実はまさに複雑で、変化も一方向に生じる訳では必ずしもない。歴史家は起こったことを自分の筋道に合わせて述べることはできるが、これから何が起こるかを述べることはできない。あくまでも「後知恵」に留まる。 厳密には、一つの事実ですらどうであったのかが明らかではないのに、それらの組み合わせ-しかも、整合的とは限らない事実の-を求めることは、たとえば義務教育段階の児童・生徒にどれくらい可能だろうか。限られた事実をもとに、つたない筋道を述べて、わかった気になってしまいはしないだろうか。これらの検討もなされた上で提案されているとは思うけれど。 また、部分を強調すると全体は見えにくくなる。全体を見ようとすると部分はおざなりにならざるを得ない。部分と全体、具体と抽象の間をわれわれ大人の認識も揺れ動くけれど、経験がより限られる人の場合、鳥の目と虫の目の両方を求めることは、反って混乱を招かないだろうか。 これまでも、いわゆる発達段階に応じて、具体の抽象化と抽象の具体化は促されてきただろうし、物事がより「わかる」とは、ある事実や事象がそれだけでは完結せず、全体の一部、つまり部分でもあるのだと捉えることができる、あるいは全体だと思っていたことが、部分の集積でもあることに気づく、このように「分け方」が変わることでもある。 「総合」とは、多くの事実を要約しようとする発想ゆえの言葉であり、一つの架構に過ぎない、同様に「さまざまな」とは、一つの事実が何かの部分として見なすゆえの言葉である、と言うとき、パフォーマンスとはどういうことなのか。もっと考えてみたい。
by walk41
| 2017-04-25 11:49
| 学校教育のあれこれ
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