授業者のできること
授業を見せてもらう中で思うようになった。授業の結果がどうなるかはあまりわからないし、ましてや精度高く予想することは不可能だけれど、「よりよい」結果がもたらされるべく、授業者のできることはそれなりにあるんだなあと。
これは「授業がどうなるかは誰にもわからない」という持論の維持であるとともに、「教師・教員としての、最低限の条件すら挙げることができないのではないか。誰でも教師たりえるのではないか」と主張してきたことの反省と修正である。 授業研究の立場からすれば、何をいまさら言うのか、と思われるかもしれないが、教科ならではの内容と方法に即してではなく、教育学者として、教科以外の部分における教員の力量が重要なことを述べたいのだ。 教員が教育内容、単元に即して、児童・生徒たちの認識や受け止め、いわゆる理解の状態を予想する。教科の内容を教員として理解していることは前提だけれど、そこから授業でどれだけ広げる、深めるかは、教科に精通するだけでは不十分だ。なぜなら、生徒たちは集合的に授業に臨んでおり、クラスメイトを意識せずにそこにいることは難しい。自分だけの事情で振舞うことは抑制される。むしろ、教科の論理が優位すると、生徒間そして生徒ー教員間のグリープダイナミクス(集団力学)が等閑視される。 あるいは、教員だけでは制御できないような偶然の出来事にも、数多く遭遇する。前の休み時間にケンカをした、宿題をやってくるのを忘れていた、修学旅行後で興奮冷めやらぬ雰囲気だったと、生徒にすらどうしようもないことも含めて。 こんな環境の下で授業行われている。それは、環境のかなり焦点を絞った限定的なものにならざるを得ないだろう。その上で発問をする、問いかける。それは、既存の理解から少し離れた、聞いて「えっ」「あれっ」と反応がありそうなものがいい。「いったい何のこと」と思われるような離れすぎた問いは、さっぱりわからないだけでなく、全然わからないことによる不快感、ひいてはそんな問いを発する教員への不満を導きかねない点で避けるべきだ。この問いを手掛かりに、児童・生徒とは違うだろうけれど、教員も問いを探索し、一緒に「学びへの旅」をすることができる。 これらは、学修によって獲得されうるものに加えて、学校内外の多様な経験とその内省を通じた自身の変態(metamorphosis)によって促されるだろう。「揺るぎのない信念」や「確固とした教師像」と距離を保った自身のマネジメントをいかに進めるか、「学びつつ忘れる、学び直す」器用さが求められる所以ではないだろうか。
by walk41
| 2017-06-05 15:34
| 授業のこと
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