学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

閾値を上げる

立ち読みで申し訳なかったのだけれど、南和友『人は感動するたびに健康になる』(マキノ出版、2012)に目を通した。間違っているかもしれないが、次のような説明だと理解した。

①自律神経は、交感神経と副交感神経から成るが、両者は随伴しており、片方の閾値を高めることで、もう片方の閾値も高まる。
②自律神経は文字通り自律しているので、意志の力で操作できるものではないが、経験を通して交感神経の閾値を高めることができる。
③心身が活動するときに作用する交感神経の閾値を上げるには、感動する、運動することが有効。
④閾値が高まることで、少量の刺激では反応しなくなる。つまり、より深く感動し、より長く強く運動できる。痛みにもより耐えられるようになる。

この説が医学的に妥当なのかどうかは素人目にはわからないけれど、多くの人が経験則とするだろう、視野の広さ、思慮深さ、大らかさ、慎重さと決断力、我慢強さ、などが相関する(無関係なものとは思えない)のならば、けっこう理に叶っていると私は思う。

仮にこの説明が事実に即しているのならば、私たちは次のような処世術を見出すことができるだろう。たとえば、
a 自分の言動を支えるのは、主体性や意志の問題でもあるだろうが、それらでも操作しえない自律神経であることを知るべき。つまり、より生理学的に自身を捉えるべきであって、栄養、運動と休息、睡眠、人間関係など、生き物として基本的な条件が自分の場合どうなっているか、に心を砕くべき。
b 交感神経の閾値を高めるには、自分の認知と感情の経験を意図的に拡げ、深めることが有効である。つまり、人間と社会そして自然とそこに生かされている自分について学ぶこと、感じることで、ひと・こと・ものに対して広く、深い理解のできる(「幅の広い人間」)自分になれる。
c これらを裏返せば、少ない刺激で反応する(閾値が低い)、つまり、すぐに身体に変化が現れ、露骨に感情を露わにする人は交換神経が劣っている、衰えているためであり、感動や運動の少ないことが考えられる。これらを得る機会をより設ける必要がある。そうでなければ「あんぽんたん」であるし、自分に疲れやすく不幸せなことだろう。もったいない。

著者の主張に対する読者のコメントには「トンデモ本」との評価も見られるので、上の説明の吟味はなお必要だ。けれど、ひと・こと・ものに対する眼差し、自分との関わりという点で、閾値の高い人がより魅力的であり、自分もそうありたいと私は思えるので、けっこうこの説に支持的だ。

「小さな出来事に大げさに騒ぎ、右往左往する」「すぐに感情を表出し、しかもその変化が激しい」「他者に批判的で自分に盲目的[こうなったのはあなた(世の中)のせいで、自分が悪いわけではない](外的帰属の場合)、あるいは、自分に批判的で他者に盲目的[こうなったのは自分のせいで、あなた(世の中)が悪いわけではない](内的帰属の場合)と、いずれも理解が単調である」といった人間像を想定するに(もちろん、自分もこれらと無関係ではない)、学び続ける姿勢を保つことの大切さを改めて教えられる。

世の中は複雑であり、想定外が多いこと(良かれと思ったことが拙くなる場合も少なくないこと)、人間は「生理的早産」をしているため後天的に獲得することが多く、時間経過の中で自身を変態させること(思っているほど、自分という存在は確かなものではないこと)などが、わかり行動できる人間か、そうではないのか。私たちは「人間としての器の大きさ」とか「人間の価値」といった言葉で、これらの意義を指そうとしているのではないだろうか。

謙虚であること、感謝すること、大らかであること、こうあるためにも人生修行として閾値を高める機会をより持つこと、を何度も反芻したいと思う。



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by walk41 | 2017-07-10 06:50 | 身体 | Comments(0)
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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