倉敷宣言(2016.5)
みなさんは、ご存じだったろうか。2016年5月に岡山県倉敷市にて、G7教育大臣会合があり、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア、英国、米国、日本、そしてEUとOECDからの参加もあって開かれたことを。
不勉強なことながら、私はこのことをつゆ知らず、「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議」の議事録に目を通していて、そこでまとめられた「倉敷宣言」が引用されていたことから知った次第だ。 この会合は、「今、世界が置かれている経済的・社会的な状況、今の子供たちが今後置かれることになる新しい時代を見据え、①「教育の新しい役割」、②「その役割を果たすための具体的な教えや学びの向上・改善策」、③「新たな国際協働の在り方」について、各セッションに分けて議論」(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/05/31/1371532_4.pdfより)し、成果文書として先の宣言を採択したのだそう。 その中に、次の一文がある。「教職の向上と支援:資質能力向上のための職能開発。教師の社会的地位や待遇の向上に向けた取組推進。教員自身の異なる文化の人々と協働することができる力やグローバル化に対応した能力の重要性。異文化・異宗教、異なる言語的背景を持つ児童生徒をグローバルな視点から教育で きる教員をG7各国が協働して育成。効果的かつ十分な教員配置の重要性を確認 。」この方向に賛成だが、同時に難しさも感じる。 たとえば、「異なる文化の人々と協働することができる力」とあるけれど、学校外はもとより、まず学校内に異なる文化が存在するから、校内でいかに協働できるかが吟味され、それが促されるような方略や構えが求められる。教育はある意味で、自身の信念の開陳あるいは吐露のようなところがあり、しかも、自分のやっていることがそれなりに正しいと思わなければできない部分もある。 なぜって、「正しい教育」など本質的には存在しないにもかかわらず、それがあるかのように仮構することで成立する部分が多いからだ。「正しい言葉づかい」「マナーや礼儀」「望ましい集団生活」「生きる力につながる学力」など、歴史的にはほんの一時の限られたアイディアに過ぎないのに、それが「ずっとそうだった」かのように見なす、振る舞うことで、学校の秩序が維持され、教員の面目が保たれるからである。 だから、倉敷宣言のような方向でこれからの教職を考えるのならば、教職に就く人には、児童・生徒に対する愛情と合わせて、これと時に反する突き放した距離感とそれを可能にするメタ認知、感情のマネジメントのよりできることを求めたい。「一人正義」や「熱すぎる教員」といった「自身に対する相対的感覚の欠如」は、「異なる文化の人々と協働することができる力」を阻害する。この力は、自身の小ささ、頼りなささを自覚した上で、他者から学ぶ、他者に対する尊敬の念を伴うものだろう。他者を軽んじたり、ましてや蔑視していては、他者とともにあることの幸せなど、感じようがないからだ。 結局のところ、平凡かつ困難な日々の振る舞いによって自身が鍛えられるのではないだろうか。自分から挨拶する、笑顔で接する、厳しいけれど楽しい場づくりに心を砕く、こんなことが先の力にも繋がることではないかと改めて思う。そして自分もそうありたいと願う。
by walk41
| 2017-07-15 10:14
| 学校教育のあれこれ
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