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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

かぶる

この間、学期末の学生のレポートを読んでいる。

前から気になっているのだけれど、「かぶる/被る」という言葉の遣い方に強い違和感を覚えており、この表現がレポートの中にも出てくるので、なぜ気になるのだろうかと考えてみた。

私の授業では、学生のレポートをクラスメイトである他の学生がコメントする(紙上対話、「赤ペン先生」と呼んでいる)スタイルを取っており、最終レポートでしっかりそれができるように、授業間にミニワークと称する小さな課題にて「赤ペン先生」の経験を重ねている(2回生向けの授業では、今期5回行った)。そこに記される、「私の考えと被っていて…」という表現が、とても気になるのだ。

そこで「かぶる」を引くと、従来の意味といっていいだろう、頭や顔などにそれを覆うものを載せる。また、全体をすっぽり覆う。「帽子を―・る」「面を―・る」「毛布を―・って寝る」「雪を―・った山」のほか、写真で、現像過程の失敗、露出過度やフィルムの欠陥などのため、フィルムや印画紙の画面が曇ってぼやける。「この写真は―・っている」。あるいは、すでにある色や音などの上に、さらに他の物が加わる。「日陰の撮影でやや青の―・った画像になる」「会話の音に電車の通過する音が―・る」、「一方の発言と、もう一方の発言が重なる。「同時にしゃべりだして言葉が―・る」」(goo辞書)という説明が見つかる。

ところが、「意見がかぶる」「考えがかぶる」は、これらと違うのではないか。その理由を考えたところ、次のような感じかなと今は思う。

①辞書に載る意味での「かぶる」は、色や音、発言あるいはフィルムといった具体物の重複である。客観的にダブっており、それにより色や音などが変質する。

②これに対して考えが「かぶる」とは、同様の考え、近い考えを指しており、抽象的な話である。よって、それらが「かぶる」ことがあっても、互いに影響を及ぼすことはない。独立したままである。

何ら意識していた訳ではないけれど、こんな点で自分勝手に言葉の線引きをしているのかもしれない。だから、私は違和感を拭えないのだ。

もちろん、これまでも書き散らしているように、言葉は時代によって移り変わるから、昔を懐かしんでも仕方がないことは承知している。ただ、移り変わりの過渡期だからなのだろうか、頻繁に聞こえるように思われ、より鬱陶しさを感じるのかもしれない。まさに、言語は思考を支配する、違和感のある言語に触れると落ち着かない、といった辺りか。

by walk41 | 2017-07-23 17:13 | ことばのこと | Comments(0)
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