学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

「わかった?」「わかりましたか?」

「わかった?」と教員が児童・生徒に尋ねるシーンは、学校経験のある人ならば容易に思い浮かぶだろう。それほどに馴染みのある言動だけれど、とても不思議な言い回しである。

なぜなら、このように子どもに尋ねることは、彼ら/彼女らがわかっているかどうかを教員はわからない、ということを表明している、つまり、児童・生徒理解、子ども見取り、生徒観念などと日頃から言っているにもかかわらず、子どもを捉える、診断する能力が教員に必ずしもないと、教員自身が述べているのだ。

また、これは全てに当てはまるわけではないが、多くの場合、語調、ニュアンスとしてこの言葉は質問の意味をなしておらず、確認を取る格好になっている点でも特徴的だ。教員は子どもがわかっているかどうかを必ずしも知りたいのではなく、わかっているはずだからね、というメッセージを暗に伝えようとしているのだ。その雰囲気を感じ取る子どもは、実際にどうかは別にして、おおよそはわかったような顔をする。こうして、次の単元に進むという「共同作業」ができる。ここで「わかりません」などと無粋な反応をしようものなら、「空気が読めない奴」の誹りを免れない。

かくして、自身だけでは子どもを理解できない、にもかかわらず、教員たるもの理解できるはず、理解できなければならないという信念が一人歩きをし続ける。また、尋ねているわけではないのに、尋ねたというアリバイづくりによって、あとあと「だって、わかったってあの時に言ってたやん」と抗弁できるカードを教員は手にする。学校の言葉はまことに興味深い。

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by walk41 | 2017-07-31 05:39 | ことばのこと | Comments(0)
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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